22日に突如強まったインターネット上の仮想通貨ビットコインの下落は、少額の資金で運用額を増やすレバレッジが得意な日本の個人投資家も直撃した。その持ち高解消が相場の一段安を促したとみられる。欧米メディアや金融機関が外為証拠金(FX)取引の「ミセスワタナベ」になぞらえ、「ミスターワタナベ」と呼ぶほど国内のビットコイン投資家の存在感は大きい。
FXと仮想通貨の情報サイト、ファイナンス・マグネイトによると、世界のFX取引でレバレッジを使った運用のうち、ミセスワタナベが占める割合は2017年1~3月期の時点で4割を超えていた。ビットコイン業界では「レバレッジ慣れしたミセスワタナベの一角がビットコインに流れ、相場を押し上げてきた」との声が強い。ビットコインの対円取引でもほぼ半分は日本勢との指摘がある。
ビットコインは取引所を介さない相対取引「ローカルビットコイン」の規模が大きく、全体像の把握は難しい。取引所データに基づいた「ミスターワタナベ」の比率計算が正しいかは微妙だ。ただ、ローカルビットコインで傾いた持ち高はかなりの割合で正規取引所に持ち込まれる。日本勢が実際に5割なのかはさておき、それなりに高い比率で売り買いをしていると考えていいだろう。持ち高整理の売りがもたらすインパクトはおのずと増す。
ここで注意しなければならないのは、足元でビットコインを売っている「ミスターワタナベ」のうち、多くは最近1~2カ月の新規参入組という点だ。ドル建て価格が1ビットコイン=1万ドルの節目をあっさりと超え、上昇ペースを速めた局面で「これはもうかりそうだ」とレバレッジ併用で買いに加わった投資家が中心。買いの平均コストが悪かったために逆回転に耐えられなかったわけだ。
一方、ミスターワタナベの主流派は17年前半の5000ドルを下回っていた段階でビットコインを買い進めたため、特に動じていない。足元の1万ドル前後でも十分利益が出ているからだ。「下落はむしろ買い増しの好機ととらえている」(国内仮想通貨取引所の営業担当者)という。
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)やシカゴ・オプション取引所(CBOE)の先物開始でヘッジファンドなどの投機筋は売りを膨らませることが可能になり、22日も一部の商品投資顧問(CTA)が先物売りを仕掛けていた。もしファンドの揺さぶりにミスターワタナベが巻き込まれれば相場の下値余地は広がるが、今のところはまだその心配はなさそうだ。
【日経QUICKニュース(NQN ) 編集委員 今 晶】
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