米財務省が17日、11月の対米証券投資動向を発表した。11月時点の中国が保有する米国債は1兆1766億ドルとなり、前月から126億ドル(約1兆4023億円)減った。規模的には7月(1兆1660億ドル)以来、4カ月ぶりの低水準となるが、全体の規模感で言えばほぼ横ばいだった。
中国の米国債保有額(青)と人民元相場(緑)の推移
(QUICK FactSet Workstationより作成)
今月10日、米ブルームバーグが「中国の外貨準備に携わる政府高官が米国債の購入の減額や停止を提案している」と伝えた一方、ロイターが11日、「中国が米国債の購入減額を検討しているとの報道は間違った情報に基づくもの」と同報道を否定する中国当局の見解を報道。直近の中国の米国債保有状況が注目されていた。
統計発表に先立ち、シティグループ証券の高島修チーフFXストラテジストは17日付のリポートで「昨日、トランプ米大統領と習主席が貿易問題で電話会談。機を見計らったかのように、中国の格付会社(大公国際資信評估)が米国債をA-からBBB+へ格下げし、見通しをネガティブと発表した。米国の貿易制裁が発表されるとの見方が強まる中、中国が米債投資を削減するという先週の報道を裏づけるような動きだった」と指摘。米中の間で、通商紛争の前哨戦が始まっているのでは無いかとの見解を示していた。
足もとで人民元はドルに対して強含む傾向にある。為替市場でドルが全面安となる状況下、人民元に対してもドルは弱含む傾向にあり、中国当局としては過度に元高・ドル安が進まないようドル買い・元売りの介入を行う必要がある。中国が米国債を売却かとの報道が出たとはいえ、ドル買い介入をやめることにも繋がりかねない米債売りは簡単にできるものではない。ひとまず、統計の数字からは中国が米国債を売っているのではないかとの疑念はひとまず杞憂に終わった格好だが、12月以降の数字も念のため注意した方が良さそうだ。
(QUICKデリバティブズコメント)
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