国際商品市場で白金(プラチナ)の価格の上昇基調が鮮明になってきた。前週16日に節目の1トロイオンス1000ドルを2017年9月以来、約4カ月ぶりに突破した後も高値圏で推移している。日本やインドなど主要市場の景気拡大でジュエリー(宝飾品)や自動車の触媒向けの「実需」が増え、相場を押し上げる構図だ。
ニューヨーク商品取引所(COMEX)のプラチナ先物は前日25日には1030ドル近辺まで一段高となった。プラチナは代表的な貴金属とあって先物や上場投資信託(ETF)の市場が厚く、金や銀と同様に世界各国の投資家に取引されている。「足元で進むドル安の裏返しで上昇した点を割り引いても基調は強い」。貴金属市場に詳しい森田アソシエイツの森田隆大代表はこう語り、「(ジュエリーや触媒向けの)実需が貢献したと考えざるを得ない」との認識を示した。
国際的なプラチナの調査機関であるワールド・プラチナム・インベストメント・カウンシル(WPIC)によると、プラチナのジュエリー向け需要は17年に259万オンス(1オンス=約30グラム)と、プラチナの需要全体(784万5000オンス)の3割超を占めたもようだ。18年の需要見通しは265万5000オンスと直近のピークだった14年の300万オンスはまだ遠いものの、前年比では伸びる計算だ。
「市場規模は金に及ばないとはいえ、プラチナ人気は着実に高くなっている」(森田氏)。とりわけ壮麗な婚礼で知られ、金を中心に貴金属との接点が多いインドではプラチナに対する若年層の関心が急速に高まってきたらしい。
プラチナジュエリーは日本でも人気だ。TANAKAホールディングス(東京・千代田)傘下の田中貴金属ジュエリーでは17年、プラチナジュエリーをコンスタントに売り上げた。「なかでも10月に発売した新作ブランド『GTフィロソフィー』はスタイリッシュなデザインが男女ともに好評で、予想を上回る売り上げを達成した」(広報広告部)。「18年も中心顧客層の50~60代の女性からの引き合いを背景に手堅い需要が見込めそうだ」という。
ジュエリーの価格は原材料に加工関連の費用や企画時にかかった広告経費などを上乗せしていく仕組み。原材料の占める割合は相対的に低くなるので、プラチナ相場の変動が価格形成に及ぼす影響は必ずしも大きくはない。ただシンプルなベーシックチェーンはプラチナの原材料価格に連動したスライド制を採用する。昨年末にかけてプラチナ価格が低迷し、べーシックチェーンの価格を抑えてエントリーユーザーの掘り起こしに成功したとも考えられる。
プラチナは自動車の排ガスから汚染物質を取り除く触媒にも使われる。ディーゼル車は欧米の環境規制の強化によって、電気自動車(EV)へシフトするとみられているが、当然、一朝一夕には進まない。しばらくは規制をクリアするためにより多くの触媒が必要となる見込みだ。中国や米国といったトラック大国からの需要は引き続き多いと考えられる。
主産地の南アフリカではランド高による生産コスト上昇などの影響で鉱山供給は減少する可能性が高い。WPICはプラチナ需給について18年は27万5000オンスの供給不足と、17年の1万5000オンスの不足から大幅に拡大すると予想している。
基軸通貨ドルの代替資産としてまず名前が挙がる金は25日に1360ドル台と、1年5カ月ぶりの高値を付けた。金に比べるとプラチナの上昇ペースは見劣りする。それでも18年は堅調な実需や、供給減による需給引き締まりでプラチナは輝きを取り戻す――。商品投資家の間ではそんな声が広がっている。
【日経QUICKニュース(NQN) 尾崎也弥】
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