外国為替市場で、対ドルや対円のユーロ売りが広がっている。7日の海外市場でユーロ相場は一時、対ドルで約2週間ぶりの安値、対円では約1カ月ぶりの安値までそれぞれ売られた。米金利の上昇やドイツ政治の不透明感を材料に、積み上がったユーロ買いの持ち高を解消する動きが加速した。
8日の東京外為市場では、対ドルのユーロ相場は前日17時時点の水準と比べて0.01ドル程度安い1ユーロ=1.22ドル台後半、対円では同70~80銭程度円高・ユーロ安の1ユーロ=134円台前半~半ばを中心に推移している。ユーロの一段安を予想する声が多い。
【7日以降の対円のユーロ相場】
ユーロ売りが加速した一因は米金利の上昇だ。7日の米債券市場では、需給が緩むとの懸念から債券売りが出て、長期金利の指標となる米10年物国債の利回りは一時、前日比0.06%高の2.86%まで上昇した。米欧の金利差が拡大するとの見方からユーロ買い・ドル売りの持ち高を巻き戻す動きが強まった。
そこへドイツの大連立政権樹立後の人事を巡る不透明感が重なり、ユーロ売りに拍車がかかった。独第2党のドイツ社会民主党(SPD)とメルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は7日、大連立政権の樹立で合意したが、新政権の財務相に誰が就くかが見えないなど、人事を巡る不透明感から外為市場はユーロ売りで反応した。
そもそも、対ドルのユーロ売りは出やすい地合いになっていた。米商品先物取引委員会(CFTC)が2日発表した1月30日時点の建玉報告によると、投機筋を表す非商業部門のユーロの買い越し幅は14万8742枚と、1999年のユーロ導入以降での最高水準まで膨らんでいた。対ドルのユーロ相場は目先、1.21ドル台まで一段の下落余地が残るとの予想も出ている。
だが欧州のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)悪化を映す材料があるわけではない。欧州の経済回復は順調で、欧州中央銀行(ECB)の金融政策も正常化に向かっている状況に変わりはない。難航していた大連立協議が合意し「『親欧州』を掲げるSPDが財務相、外相という主要閣僚ポストを得たのは、中長期的にはユーロの支援材料」(三菱東京UFJ銀行の井上雅文アナリスト)との見方は根強い。
そのため、足元のユーロ安進行は「上昇基調における一時的な調整」との解釈が多い。先行きは「3月末か4月ごろに1.25ドルを回復」(クレディ・アグリコル銀行の斎藤裕司外国為替部長)、「年内に1.30ドルを試す可能性も」(三菱東京UFJ銀の井上氏)などとユーロ高を見込む声が優勢だ。
【日経QUICKニュース(NQN) 蔭山道子】
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