独立系運用会社レオス・キャピタルワークスが手掛ける旗艦ファンド「ひふみプラス」の残高が5月末時点で初めて6000億円を突破した。国内公募の追加型株式投資信託(ETFを除く)で、5月末時点の純資産総額ランキングでは4位にランクインし、国内株が中心の投信としては最大規模を誇る。その、ひふみ投信の組み入れ銘柄が足元で変遷しつつあることに着目したい。
レオスといえば、カリスマファンドマネージャーとして知られる藤野英人社長が、2017年2月にテレビ東京系「カンブリア宮殿」に出演。年間100社以上を自ら全国行脚して将来の成長を期待できる中小企業を発掘、投資を行い莫大な利益を得てきたことや、独特の投資哲学を語ったことが投資家層の心に響いたとされる。
手掛けるファンドは直販の「ひふみ投信」、証券会社などが販路の「ひふみプラス」、確定拠出年金制度対応の「ひふみ年金」と3つあるが、販路や性質が若干違うだけで、一括して「ひふみ投信マザーファンド」というマザーファンドで運用されている。5月末時点で「ひふみ投信マザーファンド」の純資産総額は7593億円と昨年比で3割増、「カンブリア」放送前の17年1月末と比べると6倍にまで急増している。
「カンブリア」前と現在で、さらに大きく変わったのは、ファンドの中身だ。17年1月末時点では、国内株の比率が94.8%、海外株式0%だったが、昨年末時点では、国内株比率が90.5%、海外株は2.5%になった。今年5月末時点では国内株が86.6%と若干低下したのに対して、海外株の比率は9.2%に急上昇している。純資産額と組み入れ比率から推察した保有銘柄の金額は、国内株が6576億円で、海外株は699億円まで増えた。
組み入れ上位の3社はいずれも米国株で、1位のアマゾン・ドット・コム、2位のビザがともに約144億円、3位のマイクロソフトが約137億円。3銘柄合計で425億円で、海外銘柄の大半を占めたのが興味深い。
ひふみはもともと国内株の中小型株のイメージが強く、実際に組み入れ上位には中小型株がランクインすることが多い。5月末時点で組み入れ上位9位に初めてランクインしたのがTATERU(1435)。同銘柄の組み入れ比率は1.5%で、運用資産残高から逆算した保有金額は114億円にのぼる。ひふみ投信の運用レポートでは、TATERUに関して「民泊事業などの新規事業の展開に期待」と言及しており、6月15日の住宅宿泊事業法(民泊新法)施行を先取りしたものなのだろう。
ちなみに、レオスが6月6日に関東財務局に提出した大量保有報告(5%ルール報告)で、TATERU株を新規に大量取得したことが明らかになっている。報告義務日となった5月31日時点で発行済み株式の5.99%に相当する516万2100株を保有。取得目的は「『投資一任契約』および『投資信託委託契約』に基づく純投資」としていた。レオスは頻繁に5%ルール報告を提出しており、その都度脚光を浴びる銘柄が多いので注目すると良さそうだ。直近では、経営再建中のJDI(6740)を新規に大量取得する一方で、親交の深かった大塚家具(8186)の手仕舞い売りを出していたこともある。
今後も、ひふみの運用資産残高の増加に伴って投資対象とする中小型株は増えそうだが、それ以上に大型株や米国株に対するシフトも強まる可能性がある。(本吉亮)
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