8日の米国市場でテスラは反落し、2.43%安の370.34ドルで終えた。7日にイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が「非公開化を検討、資金は確保した」と明らかにしたことで前日は10.98%高で急伸したが、朝高後は反動安となった。
株式の非上場化を検討し始めたことで、テスラに対する信用力は足元では回復している。QUICK FactSet Workstationによると1年物のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)が7日に327となった。前の日は405だった。7月中旬には一時、600を超えていた。
※QUICK FactSet Workstationより
背景には転換社債(CB)の償還を無難に通過できるとの期待がある。テスラが発行しているCBのうち、2019年3月に償還をむかえるCBの株式への転換価格は359.87ドル。発行額は9億2000万ドル(約1000億円)。マスクCEOが非上場化の際に買い取る株式の価格を1株あたり420ドルと言及し株価が急伸し、それまで下回っていた転換価格も突破した。
このまま株価が高水準で推移すれば来年3月の償還時に株式への転換が進みやすく現金の流出を食い止める公算が大きい。目先の1年で見れば資金ショートのリスクが薄まったと言え、CDSが大きく反応したわけだ。
ただ、5年物のCDSは低下しているものの直近の高い水準から約100ポイント切り下がった程度。1年物の低下幅(約200ポイント)に比べると小さいだけに、信用市場は長期的な信用力についてはまだ懐疑的と言える。
また、この日は「S」に絡んだニュースが2つ流れ、史上最大級のレバレッジド・バイアウト(LBO)の先行きがさらに見えにくくなった。
8日午後、ブルームバーグは「マスク氏がソフトバンクGの孫正義氏とテスラへの投資を巡って2017年に協議し、非公開化を含む選択肢を話し合った」と報じた。経営権を巡ってテスラの主導権を維持したいマスク氏との間で意見の不一致があったほか、現時点で進行している協議はないという。7日のツイートとの関係性を期待する動きは限られた。そもそもソフトバンクGは5月31日、米自動車大手ゼネラル・モーターズの自動運転を手掛けるグループ会社にソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)を通じて22億5000万ドルを出資し、GMと自動運転分野で提携していた経緯がある。
大引け前にはウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙電子版が「米証券取引委員会(SEC)がテスラに対し、マスクCEOのサプライズな非公開化の発表が本当かどうか調査している」と報じ、株価操作の疑いが警戒されて引けに掛けて下げ幅を広げる展開となった。WSJによれば、SECはマスク氏がなぜ通常のSECへの届け出書ではなく、ツイッターで発表したのかなどと尋ねているという。
テスラはLBOに必要な資金を本当に確保できたのかーー。マスク氏のツイートの信ぴょう性に疑問が残る中、当局の対応に関心が集まっている。(片平正ニ、岩切清司)
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