ハイテク企業の世界的な集積地の1つである台湾の株式市場で「地殻変動」の兆しが起きている。台湾では、長年の相場の主役は半導体受託の台湾積体電路製造(TSMC)など、米アップルの関連銘柄だった。しかし、今年になってコンデンサー大手の国巨(ヤゲオ)などの電子部品株に注目が集まっている。アップルに代表されるスマートフォン(スマホ)から、電気自動車(EV)などに製品需要の趨勢が移りつつあるとの読みが背景だ。折しもハイテク業界では、ゲーム不振を背景に「テンセント・ショック」が吹き荒れる。ハイテクの花形といえるスマホやゲームの「終わりの始まり」の現れなのだろうか。
「アップル関連と電子部品株の神秘の交代劇」――台湾の投資コンサルティング会社、万宝投資顧問は傘下の週刊誌に今週、こんな見出しの記事を掲載した。今年に入り台湾の投資家の間で、たびたびささやかれてきた話題だ。直接の背景にあるのはヤゲオ株の急伸だ。
ヤゲオ株は6月、初めて1000台湾ドルの大台に乗せた。台湾市場で現在、株価が1000台湾ドルを超えるのは「株王」の異名を持つ光学レンズの大立光電(ラーガン・プレシジョン)のみ。値がさ株2位に付けたヤゲオに対し、台湾の投資家は「株皇后」の名称を与えた。現在の株価は7月からの利益確定売りで伸び悩んでいるが、それでも昨年末の2倍以上も高い水準にある。
ヤゲオが生産するのは積層セラミックコンデンサー(MLCC)や抵抗器などの受動部品だ。スマホにも使われるが、用途はさらに広く、あらゆるモノがネットにつながる「IOT」やEVの普及で需要が拡大。ヤゲオの4~6月期純利益は108億台湾ドルと前年同期の9倍超に伸びた。このほか、同じMLCC生産を手掛ける華新科技(ワルシン・テクノロジー)の株価も、年初来から約2.5倍になった。
台湾市場はTSMCと鴻海(ホンハイ)精密工業、そしてラーガンの時価総額上位3銘柄が、いずれもアップルの「iPhone(アイフォーン)」の生産に関わる。ところが、鴻海が13日に発表した4~6月期営業利益は前年同期比で37%減った。株価は年初から15%安。ラーガンは同1割上げたものの、騰落率は「王」が「皇后」の10分の1にとどまる。アップルは今年も秋に新製品を発表するとみられるが、「スマホの飽和感が強まるなか、高価格製品がどこまで売れるか未知数」(豊盛金融集団アナリストの馮宏遠氏)との不安はくすぶる。
【日経QUICKニュース(NQN ) 桶本典子】
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