3日の米債券市場では10年物国債利回りが7年ぶり水準まで上昇した。一時は3.186%を付け、前日より0.12%高い3.18%で終えた。時間外取引では3.2%台をつける場面もあった。
金利を押し上げた「エンジン」は主に2つだ。まずはサプライマネジメント協会(ISM)が公表した9月の非製造業景況感指数。前月から3.1ポイント上昇して61.6となり、市場予想(58.2)を上回って過去最高水準を更新した。非製造業は主にサービス業を指す。個人消費に直結しやすいだけでなく米国内総生産(GDP)の大半を占める分野だ。また、3日発表の9月のオートマチック・データ・プロセッシング(ADP)の全米雇用リポートで民間部門の就業者数が23万人増となり、市場予想(18万4000人増)を上回る強い数字となった。拡大を続ける米労働市場が賃上げ圧力として働き、活発な個人消費を促す好循環を表している。
これに年末商戦への期待感が加わる。同日に全米小売業協会(NRF)が発表した今年の年末商戦(11~12月の2カ月)の売上高予想は前年比4.3~4.8%増。直近5年の平均増収率は3.9%だといい、これを上回るペースで年末商戦の拡大が見込まれる。NRFは「順調な景気拡大と強い消費者信頼感が今年も消費を底上げする」としたうえで「貿易摩擦問題があるものの、年末にかけ活発な経済活動が継続すると楽観視している」と指摘した。
★過去の年末商戦と2018年の予測
全米小売業協会のホームページより
そして原油高。金利上昇の「2段ロケット」のエンジン燃焼に文字通り油を注ぎ、推進力をアップさせた。
WTI原油先物は中心限月11月限の清算値は1.56%高の76.41ドルで、約4年ぶりの高値水準を回復した。米エネルギー情報局(EIA)の週間在庫統計で原油在庫が800万バレル増となり、2017年3月以来の大幅な増加を記録したが、イラン制裁に伴う供給不足懸念が根強く、買いが活発化したという。
原油高・債券安の流れを受け、9月以降は米10年債利回りとWTI原油先物は強い相関関係がある。市場が原油高に伴う名目金利の上昇、インフレを織り込むかのような展開だ。(岩切清司、片平正ニ)
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