米国でにわかに早期の利上げ停止観測が浮上している。米連邦準備理事会(FRB)高官が利上げサイクルを終える可能性に触れたとの21日の一部報道がきっかけだ。市場では今後のFRBの政策運営について、2019年の米連邦公開市場委員会(FOMC)で投票権をもつ委員の顔ぶれに注目度が高まってきた。
米金利引き上げは米国内だけの問題にとどまらない。大和総研の小林俊介エコノミストは、米長期金利の上昇やそれがもたらすドル高で新興国のリスク資産への投資が細り、世界経済に打撃を与えかねない点を強調し「株式や国際商品市場が危うさを見せる中で来年の利上げはせいぜい2回までではないか」と話す。
■FOMCメンバーの政策金利見通し(ドットチャート、9月時点)
FRBが9月のFOMCで示した利上げ見通しの中心は、一回当たりの引き上げ幅を0.25%とすると3回。だが実際の会合では、その時点で投票権を持つメンバーの考え方に左右される。12月の追加利上げが既定路線としても、構成が変わる来年以降とは分けて考えなければならない。
FOMCでは常に副議長を務めるニューヨーク連銀総裁を除き、投票権を持つ地区連銀総裁の顔ぶれは毎年変わる。19年はどうか。新たに投票権を有するのはシカゴとボストン、セントルイス、カンザスシティーの各連銀総裁。このうちシカゴ連銀のエバンス総裁とセントルイス連銀のブラード総裁はさらなる金融引き締めには慎重な「ハト派」との評価が今のところ多い。
FRBのクラリダ副議長が先週末にハト派的な発言をした影響もあり、市場では「来年はFRB内部のパワーバランスが利上げペース鈍化に傾く」との見方が増えている。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループが金利先物から算出する米国の利上げ予想「フェドウオッチ」でも、1カ月前に最も高かった「19年2回」の確率が低下し、22日時点で「19年1回」がトップとなっている。
野村証券の宍戸知暁シニアエコノミストは「重要なのはパウエルFRB議長がどう考えるかだ」と指摘。「18年はイエレン前FRB議長の敷いたレールに乗るだけでよかったが、19年は独自の判断が必要になるだろう」と予想する。
パウエル氏は10月5日、「(中立金利まで)道のりは長い」と述べ、その後1カ月あまり続いた株価の調整局面を招いた。年末にかけて何らかの軌道修正をするのかが焦点になりそうだ。
【日経QUICKニュース(NQN) 金岡弘記】
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