米国株式市場は、27日のダウ工業株30種平均の値幅が871ドルにのぼるなど、相変わらずのジェットコースター相場。恐怖指数のVIXは投資家心理の不安感を示すとされる20の大台を12月4日以降、16営業日連続で上回っている。2月に米長期金利の上昇に端を発していわゆる「VIXショック」が起きた際、VIXは2月6日に50.30まで急騰したが、終値ベースで20を上回ったのは5~13日の7営業日に過ぎなかった。今回のボラティリティ急騰局面が長引いていることが分かる。
米政府の一部閉鎖が越年しそうなことから、年末年始を挟んで相場の不安材料は残りそう。トランプ大統領と米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が年明けにサシで会談すると報じられているものの、予測不能なトランプ氏だけに市場にポジティブなメッセージが出るとは限らない。
■細るETFマネー、自社株買いで「損失」も
足元で米株を支えてきた需給要因に変化の兆しが出ていると、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙電子版が伝えているのも気になる。1つはETFを通じたパッシブ投資が今年は前年比で減少に転じたということ。11月までのETFの資金流入額が前年同期比で62%減少したという。2008年のリーマン・ショック以降は順調にパッシブ投資の受け皿としてETFを通じた投資マネーが米株に流れ、低ボラティリティ下の相場環境を支えていた訳だが、その好需給に今年は変調がみられたことになる。根雪のような買いが入ってこなくなれば、高ボラティリティの相場環境が長引く恐れがありそう。
もう1つはアップルが自社株買いで90億㌦超を失ったとの報道。今年の米株の買い手の最有力主体だった自社株買いだが、その象徴的な存在のアップルが自社株買いを行ったにも関わらず、株安を受けて損失を被った格好になっているという。FRBの利上げを受けて社債発行による自社株買いの資金調達が厳しくなるとみられるほか、法人減税による自社株買いの原資も来年は一服する見込み。ETFと自社株買いという米株の2つの需給が来年は減少すると見込まれることは、先々の相場展開に不透明感を残しそうだ。(片平正ニ)
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