日本の半導体関連株が年初から急回復している。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)を上回る上昇をみせており、売られ過ぎの反動という理由だけではなさそうだ。株価の上昇は半導体市況が再び好況期入りしたサインとの声も上がり始めている。
2018年末に急落したSOXは、昨年の高値をうかがう展開。そして、このSOXを上回るパフォーマンスを見せるのが国内の半導体関連株だ。時価総額上位の「半導体関連株(合成指数)」は、年初から2月15日までに約24%上昇してSOX(18%)を上回った。2万1000円の節目を突破できず年初から右往左往していた日経平均株価とは対照的な動き。三井住友アセットマネジメントの市川雅浩シニアストラテジストは「今後の半導体需要の持ち直しを先取りする形でSOXや、国内半導体関連の一部銘柄が上昇している」と話す。
■年初からの半導体関連株(グラフ青)は強い
グラフ青が半導体関連株の合成指数(ルネサス、ローム、信越化学、SUMCO、東京エレクトロン、ディスコ)、赤は日経平均株価、紫がSOX
半導体の出荷は2017年、活況に沸いた。データセンターやスマートフォン、IoT(モノのインターネット化)など用途の多様化が背景にあった。パソコンの世代交代に合わせて好不況が3年前後の周期で巡る「シリコンサイクル」が消え、需要増が続く「スーパーサイクル」に入ったとの強気な見方も出始めた矢先、18年後半にピークアウト。米中貿易摩擦の問題や中国景気の減速が響いた。
東レ経営研究所の増田貴司チーフエコノミストは、「やはりシリコンサイクルはあったと、今回の調整で市場は気付かされた。年内に調整が終わるかどうかが焦点だが、IoTなど用途の拡大という構造的な変化で下押しは以前ほど深くならずにすみそうだ」と指摘する。
半導体関連株は、一般に半導体需要より半年~1年程度先取りして動くといわれる。今回も半導体市況が調整する約1年前の17年末あたりから半導体関連株は調整し始めた。仮に半導体市況の調整が年内で終わるならば、株価への織り込みが始まった可能性がある。
投資する際は選別が必要となる。楽天証券経済研究所の窪田真之チーフ・ストラテジストは、14日付のリポートで半導体関連株の値動きは今後、二極化するとみている。半導体メモリは供給過剰なため、メモリの依存度が高い東京エレクトロンやスクリーンホールディングスは要注意とした。
一方、メモリ以外として、シリコンウエハで世界首位の信越化学や同分野で2位のSUMCO、自動車用の半導体で世界第3位のルネサスエレクトロニクスは競争力の面からも投資魅力があるという。なかでもルネサスは年初から45%上昇した。今まさに、シリコンサイクルの転換点を迎えているのかもしれない。(根岸てるみ)
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