「永守節」の威力は絶大だった。
日本電産(6594)は24日午前、東京都内で2019年3月期の決算説明会を開催した。およそ300人超のアナリストやメディアが出席し、会場は満席状態。会長兼最高経営責任者(CEO)の永守重信氏は2020年3月期の下期の業績回復に自信をみせ、その後に株価は一時1万6225円と2018年10月以来の高値をつけた。
■日本電産の24日の値動き
「尋常ではない変化が起きた。46年経営を行ってきたが、月単位で受注がこんなに落ち込んだのは初めて」などと説明していた通り、前期実績は厳しい内容。足元では緩やかに回復し、在庫も減ってきたが、新製品の好調さに比べて既存の製品がやや苦戦しているという。「他では中国向けが回復しつつあると、はしゃいでいるようだが、私は根拠なき期待感を持たず厳しくみている」と、引き続き中国経済に慎重な見方だった。
しかし、下期の見通しに話が移るとトーンが一変。お馴染みの自信に満ちた口調が戻ってきた。
自動車向けモーターを軸に今期の下期の受注残が積み上がってきており、5G向けファンモーターの需要も伸びているという。「今後、新製品をどんどん投入していく。中国に利益や製品を取られるなんて考えずどんどん出していく」と強調した。
今期の予想営業利益は上期が24%減だが、通期では26%増と、典型的な下期V字回復となる。株価がこの日の高値をつけたのは10時30分で、永守氏の説明後にちょうど質疑応答が盛り上がりを見せていた時間だ。中国景気の鈍化に伴って1月に業績下方修正を発表した背景について「政府もメディアも楽観的だったため、警告を発する必要があった」という解説のオマケまで付いた。
さらに16日に買収を発表したオムロンの子会社で自動車向け部品のオムロンオートモーティブエレクトロニクスについては、「時価総額の縮小が懸念される自動車関連の企業なんて、どうして買ったんだと、センスのないことをいう人も多い。例外があることを理解できていない」と反論した。
健在だった永守節と、はっきり反応した株式市場。独特のコミュ力(りょく)を羨ましく感じている経営トップは、さぞかし多いだろう。(根岸てるみ)
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