米の利下げ期待が急浮上
5月の国内株式相場は、日経平均株価の月間の下げ幅が1657円(7.4%)に達し、5カ月ぶりの大きさとなった。米中貿易交渉が暗礁に乗り上げ、両国は再び制裁関税の引き上げの応酬に突入。これに伴い、世界景気の減速懸念が再燃。比較的安定していたドル・円レートも円高基調となり、輸出関連株中心に業績面の不安が広がった。
しかし、6月に入り、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が講演で、利下げに含みを持たせたことで、早期利下げ期待が急浮上。続いて、欧州中央銀行(ECB)も政策金利の引き上げ時期を半年先送りすることを決定。日銀が追加緩和に動くとの思惑も浮上。これらを受け、主要国の株式相場は一転して回復基調となった。
企業収益は年度後半から回復へ
企業価値研究所が5月末時点で集計した2019年度の業績予想は(金融を除く全産業248社ベース)、営業利益が前年度比横ばいとなった。続く20年度の予想は営業利益が同8.4%増。業種別の営業利益予想は、金融を除く19業種中、電力・ガスを除く18業種で増益となる。米中貿易摩擦の激化、中国経済の減速などの懸念を抱えつつも、19年度後半からの収益回復を見込む業種が多い。主要国の金融および財政両面からの政策サポートの継続が見込まれるうえ、産業レベルでの技術革新の潮流は、米中対立が激化するなかでも、内需関連・外需関連を問わず、国内主要企業の業績動向に大きな影響をもたらすことになろう。また、国内主要企業は強化された財務基盤を背景に、株主還元やM&A(企業の合併・買収)などをより積極化する見込み。これらも業績、株価を支えることとなろう。
(QUICK企業価値研究所 チーフストラテジスト 堀内敏成)