バレンタインデー明けとなる2月15日の夜、金融庁の会議室に30人近くの女性が集った。金融庁が主催する積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)の意見交換会「つみたてNISA Meetup」(通称:つみップ)の14回目。昨年11月に続く2回目の「女子部」は、文字通り女性だけを対象に参加者を募って開催した。
■金融庁の制度説明、iDeCoとの違いにも言及
ゲストには、おなじみの経済評論家の山崎元氏やファイナンシャルプランナー(FP)の岩城みずほ氏らに、男性ベテラン投信ブロガーの「NightWalker」さん、「虫とり小僧」さん、「吊られた男」さんの3名が加わった。さらに女子部に花を添える形で、ブログやツイッターで自身の資産運用について積極的な情報発信し、つみたてNISAを既に始めるなど投資経験豊富な「おぱる」さん、「スバル」さん、公務員の「yoko」さんの女性3名が特別ゲストに招かれ、豪華な顔ぶれが揃った。
参加者約30人のうち、6人の投資未経験者を含む半数ほどが投資歴3年未満で、経験歴の分け隔てなく「つみたてNISA」への関心が高いことがうかがえる。
金融庁担当者からは、つみたてNISAを制度化した背景や投資信託の仕組みに加え、同じく税制優遇が受けられる個人型確定拠出年金(iDeCo=イデコ)との税制上の違いも説明に盛り込まれたのが今回の特色だった。
■制度乱立の不便さや償還の不安などリアルな声飛ぶ
質疑・応答の時間では、障害を持つ娘にはつみたてNISAとiDeCoのどちらを勧めたらよいか、子供にはジュニアNISA(子供名義)とつみたてNISA(親名義)のいずれを選択すべきかといった女性目線での質問が目立った。
年間非課税枠がどうして12で割り切れない40万円なのかといった制度に関する素朴な疑問も出た。NISA(一般NISA、ジュニアNISA、つみたてNISA)をすべて一本化してもらった方が便利などの実直な要望もあり、金融庁担当者が熱心に耳を傾ける姿が印象的だった。
つみたてNISA対象ファンドの繰り上げ償還の可能性に関する質問に対して、投信ブロガーからは「繰り上げ償還をそれほど不安視せずにまずは始めることの方が重要」とのアドバイスもあり、そのうえで別の投信ブロガーからは投信制度そのもので「繰り上げ償還されると換金益に課税されるなど、何かと投資家に不利益になるのは改善して欲しい」と金融庁への要望が出る場面もあった。
今回開催されたつみップ女子部の感想を聞くと、ゲストの女性投資家からは「率直で実践的な質問」が多かったとの声が上がっていた。「ジュニアNISA口座で金融機関の変更ができないのは不便」という金融庁への要望もその一つだ。投信ブロガーからは「最近の波乱相場に関連した質問がなかったのは意外」との感想がもれた。
■懇親会ではゲストを囲む華の輪
木曜日の夜にも関わらず、懇親会には約20人が参加し、ゲストや金融庁職員を囲みながら談笑する華の輪ができた。
ゲストのアドバイスがとても参考になったとの声もあった。「インデックスファンドの低コスト化が進んでいるが、乗り換えた方が良いのか」との質問に対し、山崎氏からは乗り換え時に換金税がかかる場合は「期待リターン×税率」が目安になるとの説明があった。例えば、外国株ファンドの期待リターンをおよそ年率5%とし、税率が約20%なので、信託報酬の差が両者を掛け合わせた1%以上だと乗り換え、1%未満だとそのまま保持、という基準だ。
投資信託の仕組みのイロハを「金融当局」が丁寧に解説していたのは「凄い」とゲストの女性投資家は感心していた。「投信の資産は信託銀行において、ファンドの保有者ごとにきちっと分別管理・保全されている」ので安全という説明が金融庁からあった。
■50代女性「コツコツ投資もいいかな」
上場企業に勤める50代の独身女性は「職場の周りは自分と同年代の男性ばかり。私もそうだが、みんな定年後の生活に不安をもっているはずなのに、資産運用について話をするような雰囲気は全くない。今回参加して、ブロガーの皆さんと知り合えてよかった。つみたてNISAの非課税期間が20年といっても、定年が近い自分には無関係と思っていたが、今日の話を聞いて少し考えが変わった。一般NISAをつみたてNISAに切り替えてコツコツ投資してもいいかなと考えている」と話していた。
30代の会社員はNISAを少し前に始めたが、「職場の同僚から最近『つみたてNISAのことを教えて』とよく聞かれても、うまく答えられないので今回参加してみた。ヒントをつかめたような気がする」という。働く女性の間では、つみたてNISAの関心度合いがじわり高まってきているのかもしれない。
ゲストの岩城氏は「質疑のレベルが高かった半面、今回参加した投資未経験者が『つみたてNISAをどのように活用し始めたらよいか』を考えるのにどのくらい役立ったか少し不安。昨年11月の女子部では、つみたてNISAを始めるにあたり、その前に必要となる資産形成の金額や適切な運用場所などを5つのステップに分けて考える手順を紹介した。金融庁のつみップのサイトに説明資料が残っているので、投資未経験者の参考になれば」と話していた。
■「20年という投資なんて・・・」、女性の歌声響く
懇親会の締めの挨拶は山崎氏。「つみたてNISAは失敗しにくい制度なので、『始める』『続ける』そしてそのよさを『教える』を是非実践して欲しい」と述べた後、恒例になりつつある合唱の音頭取りに移った。
今回ひねり出した曲は「20年」と「女性」にひっかけて、1997年に大ヒットした歌姫・安室奈美恵の「CAN YOU CELEBRATE?」。歌詞のサビを「20年という投資なんて知らなかったよね」に置き換えて歌うというシャレタ計らいだった。
■再び地方へ、つみたてNISAキャラクターも誕生
3月のつみップは地方へ繰り出す。昨年12月のQUICK資産運用研究所の調査では、首都圏に比べ地方の方がつみたてNISAの認知度はやや低い傾向にある。東京でのつみップの熱気がどこまで伝播するか注目だ。
そして、金融庁はつみたてNISAのマスコットキャラクターを募集することを発表した。2月中には募集を開始する予定のようだ。
◯「個人の資産形成に関する意識調査」の概要はこちら
<金融庁> つみたてNISA Meetup
(QUICK資産運用研究所 高瀬浩、小松めぐみ)