ニッセイアセットマネジメントの「げんせん投信」は、大手運用会社としては異例の「顔の見える運用」にこだわった日本株ファンドだ。専用のWEBサイトを開設し、フェイスブックなどの交流サイト(SNS)でも情報を発信している。ファンドマネジャーの伊藤琢氏に話を聞いた。
◇げんせん投信の詳細は日経電子版「顔見える運用で新風 げんせん投信(話題の投信)」
――「顔の見える運用」にこだわる理由は。
「お客様の大切なお金の運用をまかせていただいているので、どんなファンドマネジャーがどんな運用をしているのか『見える』ように情報を開示しています。多くのファンドを扱う大手の運用会社にとって、1つのファンドだけの専用サイトを開くのはかなりチャレンジングなことですが、お客様との双方向のコミュニケーションを重視しています。WEBサイトなどの閲覧数も日に日に増えていて、好調なスタートを切れました」
――銘柄選びのプロセスも独特です。
「このファンドの『GENSENスコア』の考え方が株式投資の常識になってほしいです。企業活動が生み出した結果だけに着目するのではなく、企業が競争力の源泉として持っている『目に見えない資産』を重視するのが当たり前の知識として広がっていけばうれしいです」
――訪問先企業の社長に会う際に必ず聞くことはありますか。
「いろんなことを聞きますが、『今までで1番、自分自身を許せなかったのはどんな時ですか』という質問をよくします。この問いに対する正解があるわけではないですが、その答えに人格や生き方などがにじみ出ることがあるからです。その企業の社長がどんな人なのか、どんな考えをお持ちなのかを知る上で参考になります」
――「げんせん投信」が目指すところは。
「日本株最大のファンドです。そのためにも、お客様に近いファンドであり続けたいですね。いまはSNSを活用して情報発信をしていますが、運用に対する姿勢をしっかり見てもらいたいので、ゆくゆくは投資家に直接運用を報告できるようなセミナーを毎日開けたらいいなと思っています」
――恩師が運用する「ひふみ」を抜くということですね。
「そうですね。大学時代にレオス・キャピタルワークスの藤野英人社長の授業を取っていたことがあり、レオスでアルバイトしていたときも真摯に学ばせていただきました。ご本人にも日本株最大のファンドを目指すことはごお伝えしています。お客様の目線を大切にした『ひふみ』の成功は心からすごいと感じていますし、『ひふみ』が突破口になって盛り上がったこの流れを受け継ぎたいですね」
――今後の投信業界について。
「運用手法の多様化が進むと思います。例えば、すでに始まりつつあるロボット運用です。特にパッシブ(指数連動)型やテーマ型は、ロボットに任せる運用も今後増えていくのではないでしょうか。その一方で、運用には人間にしか分からない部分があります。当ファンドのように、そういった部分で強みを発揮する投信も増えると思います」
――今後の株価の見通しは。
「具体的な見通しは持っていませんし、予想自体に全く意味がないと思っています。そこは『神のみぞ知る』といった感じですね。どのような市場環境であっても、銘柄を厳選しながらアルファ(平均を上回る超過収益)を積み上げることを目指します」
(QUICK資産運用研究所 小松めぐみ)