これから社会に出るみなさんへのメッセージとして「新社会人が知っておきたいお金の話」を3回にわたって連載する。最終回は「発想の転換で資産形成の第一歩を」。
第1回はコチラ→ 「新社会人が知っておきたいお金の話」①資産形成のイロハ
第2回はコチラ→ 「新社会人が知っておきたいお金の話」②人生100年時代の資産形成
■目的にあわせて手段を選択
将来的な資産形成を考える前に、目先の結婚資金や住宅資金などをしっかりと確保したい人や、趣味や旅行などでうっかり使いすぎてしまう人は、給与振込口座と別の口座を持つことが手段のひとつ。社内預金や財形貯蓄など、会社の制度を利用すれば、金利や税制面の優遇があり、引き出す際の手間も増えるため、「貯蓄」という意味ではいい選択肢となるだろう。
会社によっては「従業員持株会」という勤務先もしくはその親会社の株式を購入する制度がある。もちろん株価が下落するリスクはあるが、少額から無理のない範囲で始めることができる。業績が拡大すれば株式の価値が高まるため、仕事のモチベーションにもつながり、一株主として会社を応援する意味で入会するのも一案だ。
■発想の転換で資産形成の第一歩を
新入社員にとっては少し先の話になるが、子供の教育費や住宅ローンの返済など何かと出費がかさむ30~50代に向けた資産作りはどうすべきか。お金を郵便局に預けっ放しにしていたら2倍に増えたという時代は遠い昔の話で、再来しそうな気配もない。いまやお金に働いてもらわなければならない時代へと突入した。
「そもそも投資するほどお金がない」「基本的な経済の知識がない」「何となく投資って怪しい気がする」――など様々な理由で資産形成を敬遠している人が少なくない。
実際にQUICK資産運用研究所が昨年12月実施した個人の資産形成に関する意識調査で「どんなきっかけがあれば資産形成を始めると思いますか」と聞いたところ、「まとまった資金ができたら」や「金融に関する知識が習得できたら」との回答が多かった。
そこで発想の転換を提案したい。まずは「投資はお金に余裕があって、経済に詳しい人がするもの」という概念を捨て、「資産形成は未来の自分への仕送り」と捉えてみたらどうだろう。「10年後の自分へ海外旅行の資金を」「15年後の自分に子供の教育費を」と言った具合だ。
新社会人には何と言っても「時間」という武器がある。その強みを最大限生かせるしくみを活用しながら、資産形成の一歩を踏み出してみたい。
■できたてホヤホヤ「つみたてNISA」
今年1月から始まった「つみたてNISA」(積み立て型の少額投資非課税制度)は、これから投資を始める人に最適の仕組みだ。
その理由の1つは、投資できる金融商品が、金融庁が長期投資に適すると判断した投資信託もしくはETF(上場投信)に限定される点だ。初心者は最初に商品選びでつまずくことが多い。つみたてNISAは金融庁が太鼓判を押した商品から選ぶという安心感がある。対象商品には、1つの投信で日本をはじめとする世界の株式や債券、不動産に投資できるタイプもあるので、手軽に分散投資を始めることができる。
通常は金融商品の利益には、20.315%の所得税(復興特別所得税含む)が課されるが、つみたてNISA口座で購入した金融商品は税金がかからない。運用期間は最長で20年(この間、解約はいつでも可能)、投資限度額は年間40万円。つまり最大800万円のお金を非課税で運用できる。資産形成の鉄則である「長期・分散・積立」の3つを税制メリットを受けつつ実践できるという訳だ。
言うまでもなく、絶対に損をしない金融商品や投資手法は存在しない。積立投資も例外ではなく、常に右肩上がりに資産が増えていく訳ではない。自分の資産が目減りし、投資に対して不安や懸念が生まれる時は、静観することも大事になる。目先の運用成績の上下に一喜一憂することなく、俯瞰的な視野を持って資産形成に挑戦してほしい。
(QUICK資産運用研究所)