QUICK資産運用研究所=高瀬浩
刻々と飛び込むニュースをどう捉え、ポートフォリオをどう組み替えるか--。独立系金融アドバイザー(IFA)のバリューアドバイザーズ(東京・新宿、五十嵐修平社長)は、新規顧客を開拓する一環として、今年から投資を体感できるセミナーを開催している。3回目となった9月11日は、平日の夜にもかかわらず、30人近くが参加した。
■様々なニュースを短時間で判断、ポートフォリオは攻めか守りか
体感型セミナーは、投資の啓蒙を図りつつ新たな顧客を獲得するのが狙い。オランダに本拠を置く運用会社のNNインベストメント・パートナーズが開発した「インベストメントゲーム」を使い、参加者が4人1組のグループに分かれて話し合いながら投資を判断し、パフォーマンスを競い合う。
投資するのは、外国株式6銘柄、外国債券3銘柄、コモディティ(商品)型など投資信託4銘柄の計13銘柄と現金で構成する仮想のポートフォリオ。10分間配信される架空のニュースをきっかけに、どの銘柄を組み入れ、その比率をどうするかなどを短時間で判断する。
架空のニュースは、原油価格の大幅な上昇、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ、中東での戦争勃発、投資対象企業の決算発表、有名人のスキャンダル、米労働市場の統計など様々。ポートフォリオを「攻め」と「守り」のどちらに傾けるか、架空のベンチマーク(指標)のリターンを上回るにはどのようにポートフォリオを構築するかなどを決める。
銘柄の分散と資産の分散という「マルチアセット」運用の重要性を、仮想の世界の金融市場において体験学習するシミュレーションゲームだが、短時間で判断が求められるとあって、情報を取捨選択しながらの最適な投資の難しさを体感できる仕組みという。参加者の中には「金融市場の様々な状況を的確に把握し、投資判断を下すのは簡単ではない」などと考え、IFAに資産運用の相談をしてみようと考える人もいるようだ。
■参加者の半数近くが個別面談へ
過去の体感型セミナーでは参加者の半数近くが後日の個別面談を希望。ゲーム中に進行サポート役である同社の社員と会話を交わすことで、IFAへの親近感を持ってもらうきっかけになっている面もあるという。セミナー参加者の3割くらいが新たな顧客になっているそうだ。
同社が持つ約600人の顧客は50~60代が多く、現在は若年層、資産形成層の獲得に注力しているが、今回のセミナーは勤め帰りの30~40代の男性会社員が目立った。また参加者の大半はIFAを利用したことがなく、同社の提携先でありセミナーに協賛した楽天証券の案内を通じてセミナー開催を知ったという人が多かったようだ。
「老後2000万円問題」をきっかけに資産形成への関心が高まっており、IFAにとっても業容拡大の好機。趣向を凝らした体感型セミナーも資産形成の裾野を拡大する試みと言えそうだ。