金融機関の窓口に行ったり、ネットで自ら投資先を探したりしなくても、資産運用ができる時代が本格的にやってきた。台頭するサービスの1つに、コンピューターのプログラムが資産運用を指南するロボットアドバイザー(ロボアド)がある。このロボアド市場の一角を担うのがウェルスナビ(東京・渋谷)だ。
預かり資産1300億円超、国内最大規模
ウェルスナビは、年代や資産状況、運用の目的など6つの質問でリスク許容度を5段階に分け、許容度に応じた資産配分を提案。低コストの米国ETF(上場投資信託)で運用し、資産配分の見直し(リバランス)もする。運用手数料は残高の1.08%(3000万円を超える部分は0.54%)。
2016年7月のサービス開始から成長のスピードは衰えず、預かり資産は1300億円を突破(図1)。ロボアドとしては国内最大規模だ。口座申込件数は18万件にのぼり、20~50代の働く世代が9割以上を占める。
また、ウェルスナビでは銀行や証券会社、空港会社などさまざまな企業と提携することで、サービスを提供しているのが特徴だ。既存の金融機関に限らず、異業種を巻き込んでロボアド市場をけん引する同社の柴山和久代表取締役CEOに話を聞いた。
最低投資金額を10万円に引き下げ
――利用状況は。
「投資経験のある人から支持を集めているのが特徴の1つで、その割合は7割を超えます。利用者からの口コミが新たな利用者の呼び水になることも多いです」
「昨年からは投資未経験者にも裾野が広がってきました。当初100万円だった最低投資金額を10万円に下げたことやテレビCMなどマス広告の効果が出ています。おつりで投資ができるサービス『マメタス』の人気もあって、女性の利用者や若年層の割合が増えています」
――成長し続ける背景は。
「今まで日本になかった新しいタイプのサービスを提供できたことにあると思います。『働く世代の資産運用』として、忙しく働く人たちでもスマホで隙間時間に高品質の資産運用を可能にするサービスを実現しました」
「かつては同じ会社に終身雇用で勤め上げ、退職金で住宅ローンを返して年金で暮らす、という典型的なモデルがあり、働きながら資産運用するニーズがなかったように感じます。しかし現在は、人材の流動性でキャリアプランが変わり、年金への不安も大きくなっています。こうした変化で生まれた資産運用ニーズを満たすサービスがロボアドです」
――預かり資産残高はロボアド他社を圧倒しています。
「他の企業と連携するオープンイノベーションを先駆けてやってきた成果です。ウェルスナビの残高と、提携パートナーを経由した残高がほぼ半々となっています」
「ロボアドは革新的なビジネスモデルですが、収益性の高いビジネスではないですし、簡単に使ってもらえるサービスでもありません。働く世代を豊かに、といった同じようなミッションやビジョンが共有できる他社と協力することで、サービスをより広めていくことが可能になると考えています」
――ウェルスナビの強みは。
「質の高さと透明性の両方が満たされていることでしょうか。弊社は社員の半分近くがエンジニアで、モノづくりする金融機関として、技術力で品質を追求します。自動でお任せの資産運用をうたっているので、運用手法などがブラックボックスではダメです。資産運用のアルゴリズムや手数料などの情報をWEB上で公開し、『ガラス張り』であることを意識しています」
――今後に向けての抱負は。
「現在の預かり資産額では、まだスタート地点に立っているとさえ言えません。まずは1兆円。それでも社会的インパクトはほぼゼロに近いかもしれません」
「社会インフラの1つとなるよう、長期的なコミットメントを重視しつつ、パートナー企業との協業を進めていきます。どこにいても安心して預けられるサービスとして、全国津々浦々に普及させていきたいですね」
(QUICK資産運用研究所 小松めぐみ、イノベーション本部 吉田晃宗)