QUICK資産運用研究所=高瀬浩
インターネット証券大手の楽天証券が昨年開講した独立系金融アドバイザー(IFA)を養成するビジネススクールが6月から2期目に入った。新たにオンライン講座を導入した効果で、受講者は昨年度から倍増した。楽天証券はIFAを自ら育成し、同社が注力するIFAを介した預かり資産の拡大につなげるのが狙いだ。
■受講者は30~40代が中心
講座は税制やポートフォリオ理論など金融の基礎知識を習得する「基礎コース」と、最適な資産形成プランを提案できるようになる実務力を身につける「実践コース」の2つ。基礎コースを修了した受講者のうち、希望者が実践コースに進む。
受講者数は基礎コースが109人、実践コースが64人と、それぞれ昨年度(52人、33人)の2倍に増加。このうちオンライン受講者は基礎コースが72人、実践コースが37人に達した。
年代別では30~40代が中心で、男女比率は両コースとも7対3。実践コース受講者の職業は、証券業界の2割弱に対して、保険業界が3割強と上回った。
- 【年代別比率】
20代 30代 40代 50代 60代
基礎コース 14% 37% 32% 14% 3%
実践コース 19% 28% 30% 20% 3% - 【男女比率】
男性 女性
基礎コース 71% 29%
実践コース 73% 27%
■実践的な演習、IFA創業者が対談
楽天証券は7月6日に開いた実践コース4日目をメディアに公開した。前半の講義は、運用会社アライアンス・バーンスタインの後藤順一郎AB未来総研所長が講師を務め、「世代別で考えるポートフォリオ構築とその実践」について解説した。
グループに分かれての演習は、具体的な事例に基づき、顧客に最適なポートフォリオを策定するなど実践的だ。後藤氏は「資産配分を決める際に必要となる各資産の『期待リターン』はあくまで仮定を置いた数値であり、期待リターンの数値に頼りすぎるのは禁物」と助言し、「人生100年時代の資産寿命に関係する『平均寿命』は年々少しずつ長期化しており、将来の平均寿命は現在よりも相当長くなっている」と指摘した。
後半の講義は、IFA会社の創業者であるガイア(東京・新宿)の中桐啓貴社長とフィナンシャルクリエイト(東京・板橋)の髙塚大広社長の対談。「なぜIFAとして独立したのか」「独立して一番うれしかったこと、大変だったことは」「最も必要なスキル・知識は何か」といった質問に答えた。
講義後の懇親会にはオンライン受講者も参加し、講師を交えて交流を深めた。受講者から「IFAと成年後見制度に関わる行政書士の仕事は親和性がとても高い」(行政書士)、「保険会社が今後の役割として顧客への資産運用をアドバイスするのは有望」(保険会社社員)などの声が聞かれた。
金融機関によるノルマ営業の問題が顕在化する中で、金融機関に属さない「独立系」のIFAの役割が注目されている。一方で、IFAとして収益基盤を確立するのは必ずしも容易ではないようだ。金融庁が掲げる「貯蓄から資産形成へ」を推進するうえでも、信頼のおけるIFAの養成はカギになってくる。