QUICK資産運用研究所=小松めぐみ
老後の資金づくりに適した制度として注目される個人型確定拠出年金(イデコ=iDeCo)。受付金融機関としてイデコを取り扱うイオン銀行は、対面とネットのチャネルを両方活用して加入者を伸ばしている。同行リテール商品・サービス部の深野哲司マネージャーに最近の動向やサービスの特徴などについて話を聞いた。
■買い物ついでに相談、抜群のコスパ
――イオン銀行のイデコのセールスポイントは。
「イオンモール内に店舗を構えるため、買い物ついでに気軽に立ち寄れる窓口は利便性が高い。休日・夜間を問わず365日、全国140店舗で営業時間内にいつでも相談できるのは弊社の強みだ」
「運営管理手数料は、拠出金額に関係なく常に無料。他の手数料についてもネット証券と同じくらい安いのに、窓口で相談ができるので、コストパフォーマンスは抜群に高いと考えている」
■節税効果が魅力、主婦の加入率高く
――加入者の属性や傾向は。
「業界平均に比べて、主婦の加入率が高い。平日の買い物の際にチラシを持ち帰って、土日に家族で来店するケースもある。イオン銀行の顧客層は40代前後が中心で、イデコ加入者もその傾向は重なる。住宅費や教育費などがかさむ世代には、イデコの節税効果に魅力を感じる人が多い」
「申し込みのうち6割が窓口、残り4割はネット経由だ。ネットで弊社のイデコを知り、申し込みの過程で窓口に来て相談したり、逆に窓口でイデコの相談をして、申し込みはネットで済ませたりする。対面とネット、双方のチャネルが相乗効果をもたらしている。イオン銀行に口座がなくても加入できるが、多くのお客さまにはイデコ加入をきっかけに口座も開設していただいている」
■選べる商品数は必要最低限に
――商品ラインアップの特徴は。
「商品数は必要最低限の24本にしぼった。選択肢が多すぎると、運用の初心者の方は何に投資したらいいかわからなくなると考えている。品ぞろえはパフォーマンスの安定したファンドや、知名度の高いファンドを組み入れた」
「この中からお客さまが選ぶ商品はインデックス(指数連動)ファンドが中心だが、『ひふみ年金』の買い付けも目立つ。3~4ファンドを組み合わせて投資する方が多く、バランスよく資産分散されている印象を受ける」
――分散投資が浸透している背景は。
「イデコに限らず、窓口で資産形成の相談を受けた際は、『長期・分散・積み立て』を一から丁寧に説明するよう全店で徹底している。活用する税優遇制度をイデコにするか、つみたてNISA(積み立て型の少額投資非課税制度)にするかはお客さまのニーズ次第だ」
「お客さまはファミリー層が中心なので、まとまったお金を投資するというよりも、積み立てによる資産運用への関心が高い。積み立てる金融商品は投資信託だけでなく、積み立て式の定期預金や外貨積み立て、年金保険など幅広くご案内している」
■店舗でセミナー、映画館も利用
――イデコの推進で意識していることは。
「イデコの資料請求をした人のうち、実際に加入するのは3~4割程度で、成約率が高いとは言えない。手続きの煩雑さが妨げになって成約率が低下しないよう、申込書の書き方の動画を配信するなどして、お客さまの事務負担を減らす工夫をしている」
「資産形成に関する金融セミナーにも力を入れ、店舗では弊社職員による数人規模のセミナーを随時開催している。ファイナンシャルプランナーや運用会社の社長などをゲストに呼んで数百人規模で行うセミナーは、映画館『イオンシネマ』で開催するなどグループのリソースを活用することもある。全国のイオンシネマを中継して、各地に住むお客さまが参加できるようにした」
「提携先のみずほ銀行(運営管理機関)から情報提供やコールセンターなどのサポートを受けることで、サービスの厚みが増している。みずほ銀行が提供する資産運用のロボアドバイザー『SMART FOLIO <DC>』をウェブ上で公開し、ファンド選びに悩むお客さまの参考にしてもらっている」
■資産形成への意識広まる
――6月に話題になった「老後2000万円問題」の影響は。
「お客さまからの相談件数が伸びた。イデコの資料請求が増え、金融に関するセミナーの集客率も上がった。ネットで取引を完結する方は金融に関する知識が相対的に高いが、そうでない方にも資産形成への意識が広まりつつあるように感じる」
――今後の展望は。
「イオングループのサービスと連携した積み立て投資のキャンペーンなどを考えたい。イデコを取り扱い始めたのは2017年7月で、当初からイデコの普及に貢献したいという思いは変わっていない。これまで手続きや手数料をわかりやすくし、敷居を低くするよう努めてきた。今後も気軽に資産形成をお手伝いできる銀行として、他にはないユニークさでサービスを広めていきたい」
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