グローバル市場で上場投資信託(ETF)の存在感が一段と高まっている。QUICK FactSet Workstationのデータによると、米国上場のETFの運用資産残高(AUM)は11月末時点で約3.35兆㌦(約380兆円)。2016年末時点(約2.55兆㌦)に対して3割増加した。運用手数料が低く商品設計も指数に連動するタイプでわかりやすく、マネーを飲みこんでいる姿が鮮明だ。
ETFは投信であるため、常に資金の流出入が発生している。年初から11月までの流出入額は4156億㌦(約46兆円)の流入超となった。
2社のシェアは65%
運用会社別のAUMを見ると、ビジネスとしては寡占が進んでいる構図も浮かぶ。首位は約1兆3300億㌦のブラックロック、バンガードが約8400億㌦で続く。2社だけでシェアの合計が65%程度に達する。要因の1つに考えられるのが手数料の比率だ。運営費用比率(Total Expense、投資資産に対する運営費用の割合)のわずかな違いが、ファンドフローに大きな与えている。
米国最大のETFで、運営費用比率が0.09%のステートストリート・グローバル・アドバイザーズ(SSGA)の「SPDR S&P500 ETF Trust」は年初から103億㌦の資金が流出した。一方、同比率が0.04%のブラックロックの「iShares Core S&P 500 ETF」には300億㌦、バンガードの「Vanguard S&P500 ETF」には139億ドルの資金が流入した。
手数料の違いが運用資産残高を左右(QUICK FactSet Workstationより)
ネット証券経由で流入も顕著
マネーの流入経路にも興味深い傾向が見て取れる。米国のネット証券大手、チャールズシュワブが手掛けるETFには年初から累計で241億㌦が流入。現時点で今年の流入ランキングではブラックロック、バンガードに続く3番手に位置した。同グループのETFのAUMは合計で951億㌦とSSGAの6分の1に過ぎないが、今年の資金流入額はこれまでにSSGAの2倍にもなる。
ETFのブランド名「SPDR(スパイダー)」で有名なSSGAだが、運営費用比率の加重平均は0.18%でバンガードやチャールズシュワブと比べると高い。特にバンガードは低い手数料で他社に対する攻勢を強めており、業界内では「アマゾン・エフェクト」になぞらえて「バンガード・エフェクト」と呼ばれることもある。
日本では来年から少額投資の非課税制度である「積み立てNISA」が始まる。野村アセットマネジメントは11月下旬に債券型で複数のETFを東京証券取引所に上場させたばかり。日本でも個人金融資産が低コストのETFに向かうのか。関心が高まりそうだ。