フェイスブックが25日に2018年1~3月期決算を発表する。QUICK FactSet Workstationによると、20日時点の市場の予想EPS(1株利益、Non-GAAP)は前年同期比35%増の1.53ドル。売上高は、広告収入の伸びがけん引し同42%増の114億ドルと高成長を維持しそうだ。もっとも、投資家の関心は個人情報の不正利用問題の影響に向かっている。
【フェイスブックの18年1~3月期決算に対する市場予想】
・売上高 :114億0700万ドル(42%増)
・広告売上高 :112億6300万ドル(43%増)
・うち携帯向け広告 :101億2400万ドル(52%増)
・1株利益(EPS) :1.53ドル(35%増、Non-GAAP)
1.35ドル(30%増、GAAP)
(注:増加率は対前年同期)
最近の情報不正利用問題を受けた株価急落で、フェイスブック(緑線)は、ネットフリックス、アマゾン・ドット・コム、アルファベット(グーグル)を加えた「FANG」(青線)から脱落するような値動きとなっている。
(注)QUICK FactSet Workstationより作成
マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が出席した米上院での公聴会を経て、株価はひとまず下げ止まった。だが、市場は「ユーザー離れ」の有無を確認したいという状況だ。
ある米系証券は最大のリスクとして「DAU(日次アクティブユーザー)の伸び」を挙げる。今回発表されるDAUは「四半期最後の30日間の平均データに基づくもの」なので、1~3月期の場合、最後の30日間の約半分が不正利用問題の影響が出てくる可能性がある。もしDAUの伸びが市場予想を大きく下回るようであれば、投資家の警戒感は再び高まるだろう。
【月間アクティブユーザーと日次アクティブユーザーの推移】
MAU DAU
15年1~3月期 14.4(13%) 9.3(17%)
4~6月期 14.9(13%) 9.6(17%)
7~9月期 15.4(14%) 10.0(17%)
10~12月期 15.9(14%) 10.3(17%)
16年1~3月期 16.5(15%) 10.9(16%)
4~6月期 17.1(15%) 11.2(17%)
7~9月期 17.8(16%) 11.7(17%)
10~12月期 18.6(17%) 12.2(18%)
17年1~3月期 19.3(17%) 12.8(18%)
4~6月期 20.0(17%) 13.2(17%)
7~9月期 20.7(16%) 13.6(16%)
10~12月期 21.3(15%) 14.0(15%)
18年1~3月期 21.9(13%) 14.4(13%)
(注)単位は億人、カッコ内は前年同期比の増加率、18年1~3月期は市場予想。
数字以外で気になるものが二つある。ひとつは、一部で話題になった有料サービスの可能性だ。シェリル・サンドバーグ最高執行責任者(COO)がインタビューで、利用者が全ての情報収集をオプトアウト(拒否)できるようにする機能は無料サービスではなく有料サービスになると述べたことが背景にある。オプトアウトの増加は広告事業の魅力低下につながるため当然の発言と言えるが、仮に導入された場合、収益構造の変化を見極めるまでは投資家にとっての不透明要因となるだろう。
もうひとつはESG。ある投信のファンドマネジャーは「海外のESG投資の反応が気になる」と話す。16日付の英フィナンシャル・タイムズ紙は「フェイスブックの企業統治を株主が非難」という記事で、ザッカーバーグ氏への議決権の集中など企業統治(ガバナンス)面に対する複数の投資家の懸念を伝えた。
国内たばこ大手のJT(2914)が2月以降、予想配当利回りが5%に上昇するまで売り込まれたのは記憶に新しい。市場では「ESGを気にする機関投資家が手放しているのでは」との声が出ていた。
ひとたび問題が起こると注目されるのがガバナンス。改善に向けたメッセージが出てこなければ、ESGに絡む需給懸念がくすぶり続ける。加えて、高まる「フェイスブック規制論」も和らぐことはないだろう。(吉田晃宗)
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