米国と中国の貿易戦争の火ぶたが切って落とされたのを受け、外国為替市場では中国・人民元の先安観が広がっている。QUICKがまとめた7月の月次調査<外為>によると、人民元相場が今後6カ月間に下落するとの予想は2016年12月以来の多さになった。
中国本土市場(オンショア)の人民元は対ドルで1ドル=6.69元前後と、およそ1年ぶりの安値圏にある。対円では年初の1元=17円台前半から16円台後半に下げている。米中貿易摩擦が激しさを増してきた6月以降、人民元に対する下落圧力が増している。
月次調査によると、金融機関の外為担当者のうち、向こう半年間で人民元の対円相場が下落すると予想した人は全体の56%を占め、比率は16年12月(63%)以来の大きさとなった。上昇予想の割合から下落予想の割合を差し引いたディフュージョンインデックス(DI)はマイナス44と、同じく16年12月(マイナス50)以来の大幅なマイナスとなった。16年は後半に中国景気が減速するなかでトランプ大統領の誕生が重なり、元安・ドル高懸念が加速し、およそ8年7カ月ぶりの元安水準となった局面だ。今回もまた人民元は貿易戦争を仕掛けたトランプ氏に翻弄されている格好だ。
貿易摩擦が中国経済に与えるダメージに対する懸念も広がる。外為市場関係者が貿易摩擦で最もマイナスの影響を受けるとみているのが「中国」。全体の53%が世界第2の経済大国の名を挙げた。「中国の習近平主席には長いスパンで(今回の事態に)臨む余地がありそうだが、そうした楽観には案外、死角があるようにみえる」との指摘も出ている。
中国国家統計局が16日に発表した18年4~6月期の実質国内総生産(GDP)の前年同期比の伸び率は6.7%と、3期ぶりに減速した。インフラ投資も消費も伸び悩み、貿易戦争が外需を直撃するリスクにも直面している。中国は人民元の安値誘導で米国の制裁に対抗しているとの見方もあり、「戦局」の行方次第で通貨の安定が一気に損なわれる可能性も看過できない。(QUICKナレッジ開発本部)
※QUICKでは株式や債券、外為部門などの市場関係者を対象に毎月、足元の景気や相場動向についてアンケートを実施。結果を「QUICK月次調査」として各部門ごとに公表しています。今回の<外為>の調査期間は7月9~11日。QUICKの情報端末で月次調査の詳細とヒストリカルデータをご覧いただけます。