QUICK編集チーム=伊藤央峻
米大統領選に世界の注目が集まる2020年。外国為替市場では「強いドル」になるとみている関係者が目立つ。世界の経済や貿易が回復に向かい、米国景気も堅調を保てばドルが買われるというのがメーンのシナリオのようだ。QUICKと日経ヴェリタスの共同調査では、来年に最も上昇する通貨はドルと答えた人の割合が4割弱と最も高かった。円は「最も強い」と「最も弱い」がそれぞれ2割以上で強弱感が対立している。対ドル相場の見通しの平均は、年間の高値が1ドル=103.98円、安値は113.03円となった。
月次調査は1年前も強い通貨弱い通貨を予想してもらい、当時は最も強い通貨で円(36%)とドル(32%)が拮抗していた。実際は足元のドルの実効為替レートは昨年末比ほぼ横ばい、円の実効レートは約3%上昇している。
三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩シニアストラテジストは「緩和的な金融環境の中で米経済の強さが再確認されればドル需要が強まる」とみる。米国株や利回りが相対的に厚い米国債に投資マネーは集まりやすい。日米欧3通貨の強弱関係を尋ねた質問では「ドル>円>ユーロ」の順とする回答が最も多く3割を超えた。
ドルが強ければ2通貨の関係で円は弱くなるが、強い通貨のほうで日本円を挙げる人も多い。
三菱UFJ銀行の内田稔チーフアナリストは現在のドル高はやや行き過ぎと指摘。「米国のインフレ率は上がりにくく、これ以上、景気も過熱しにくくなりそう」とみており、年間の高値が1ドル101円、安値が111円と、今年よりもドル安・円高方向へ修正した予想をしている。
米中協議が決裂するなどしてドル高・円安のリスクオン前提が崩れると、巻き戻しでドル売り・円買いが進みやすくなる。「強いドル」シナリオの回答者からも、この点を心配する声が聞かれる。
一方、最も弱い(下落する)との見立てが多いのは、19年に対ドルで11年ぶりの安値をつけた人民元だ。米国の対中関税に対抗するため中国政府が通貨安で景気を下支えする可能性もある。英ポンドやユーロなど欧州通貨も、景気や政治動向の先行き不透明感から弱含むと見る向きが多い。
外為関係者の関心は、米中通商交渉と米大統領選にほぼ集中しているが、「市場は突発的なリスクに対して脆弱」との指摘もある。2020年のテールリスクを挙げてもらったところ「世界的な金融危機」(38%)が4割近くに上った。低金利下で膨張した企業債務、金融機関のレバレッジドローンなどへの警戒感が広がっている。
調査は9~11日に実施し、93人が回答した。
※QUICKでは株式、債券、外為の市場関係者を対象に、景気や相場動向についての月次アンケートを実施しています。それぞれの調査結果の詳細は、QUICKの様々な金融情報端末・サービスで公表しています。