市場関係者は、米連邦準備理事会(FRB)が年内に量的緩和政策を転換するとみていた。QUICKと日経ヴェリタスが共同で実施した5月の月次調査<外為>で、FRBが量的緩和の段階的な縮小(テーパリング)を決めるのはいつごろになるか聞いたところ、回答者の8割が2021年内を選んだ。FRBはゼロ金利政策を23年末まで継続するとしているが、市場参加者は前倒しを予測している。
テーパリングを決める時期は「今年9月まで」との回答が24%、「12月まで」が54%だった。みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストは「8月に開催されるジャクソンホール会議で緩和縮小が示唆されるのでは」と予測する。縮小が決定した場合の円の値動きを聞いた質問では、「1~3円未満の円安・ドル高」との回答が5割を占めた。
金融緩和が引き締めに向かえば長期金利に上昇圧力がかかる。米長期金利が年内にどこまで上がるか尋ねたところ、2%を超えるとの回答が6割だった。4月の調査より10㌽増加した。足元の長期金利は1.6%台前半で推移している。
市場の見方の背景にあるのは米経済の立ち直りだ。4月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比で4.2%の大幅な上昇だった。3月に始まった1人1400ドルの現金給付やワクチンの急速な普及が個人消費を支えている。「人々の行動規制が解除され、雇用回復に繋がる」(唐鎌氏)とみられる。
一方でFRBは、現状は一時的なインフレとの見方を崩していない。住友商事グローバルリサーチの鈴木将之シニアエコノミストは「FRBは雇用を重視しており、コロナ禍で急減した雇用が年内に回復する見通しは立てにくい」と話す。そのうえで「テーパリング議論は時期尚早では」との見方だった。
新型コロナの感染が広がった昨年と比較した場合、比較対象が低水準のため、前年同月比の伸びは大きくなりやすい。4月の米CPIについても「名目値だけでなく実質値にも目を配るべきだ」と鈴木氏は話す。
調査は5月17~19日に実施した。金融機関や事業会社の外為市場関係者83人が回答した。