市場関係者は米長期金利がさらに上昇すると見ていた。QUICKと日経ヴェリタスが共同で実施した4月の月次調査〈外為〉で、米10年国債利回りが年内にどこまで上がるかを聞いたところ、半数が節目の2%を超えると回答した。3月の調査より20㌽の増加だ。背景にあるのは急回復しつつある米国の景気で、今年9月までに一段と円安が進むとの回答は8割に達している。
対ドルの円相場は3月に1ドル=110円台と1年ぶりの円安・ドル高水準をつけた。2021年度上半期の動向を聞いたところ「110~112円まで」と「112~114円まで」との回答がそれぞれ3割超を占めた。116円まで円安が進むとの回答も多く、全体では81%が円安を予想している。
為替相場に影響する要因として85%(複数回答)が選んだのが米長期金利だった。21年に「2.0%台」まで上がるとの回答は33%、「2.1%台」と「2.2%台」との回答はそれぞれ6%、2.3%以上になるとの回答も5%あった。3月の調査では半数が1.7~1.8%を予想しており、2%を超えるとの回答は30%だった。
みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストは「米長期金利が2%まで上昇、為替は1ドル=115円近辺というのが大方の見方」と話す。長期金利が節目となる2%台を超えるまで、この基調は続くと見る。
こうした予想の背景にあるのは、急速に立ち直りつつある米国経済だ。バイデン大統領は新型コロナワクチンの接種目標を4月末までに2億回と表明した。唐鎌氏は「ワクチン政策は景気動向に結び付く」と話す。実際に雇用も改善傾向にある。2日に発表された3月の雇用統計では、非農業部門の就業者数が前月から91万6000人増えた。市場予測(67万5000人程度)を大きく上回り、失業率も前月から0.2ポイント下がり6.0%になった。
米国経済が大きく回復するとの見方は世界のコンセンサスになっている。3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では2021年の成長率見通しを6.5%と予想した。国際通貨基金(IMF)も6.4%の成長を予想している。
調査でも21年の米国の成長率を予想してもらった。「6%以上6.5%未満」が35%、「6.5%以上7%未満」が29%だった。外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は「米国経済は4~6月に急回復が見込まれる」とみる。バイデン政権による1.9兆ドル(約200兆円)のコロナ対策の効果に続き、「3月31日に表明した2兆ドル規模のインフラ投資計画も前向きに評価されている」という。
一時は1ドル=110円96銭程度まで円安が進んだが、直近では1ドル=109円台まで円高に振れている。インフラ投資計画も共和党からは規模縮小を求める声が出ている。神田氏は「ドル円相場は一時的に揺り戻しがあるだろうが、長期金利の上昇基調は変わらないだろう」とみていた。
調査は4月5~7日に実施した。金融機関や事業会社の外為市場関係者82人が回答した。
QUICKでは株式、債券、外為の市場関係者を対象に、景気や相場動向についての月次アンケートを実施しています。それぞれの調査結果の詳細は、QUICKの様々な金融情報端末・サービスで公表しています。