新興国通貨の先安観が強まっている。QUICKがまとめた9月の月次調査<外為>によると、南アフリカのランドやロシアルーブル、ブラジルレアルが対円で下落すると予想している市場関係者(金融機関の外為担当者)が目立つ。米国発の世界的な貿易摩擦が経済基盤の脆弱な新興国通貨を狙い撃ちし、米利上げ路線による資金流出に拍車がかかるとの見方が広がっている。
中でもランドについては、半年先に下落しているとの予想が70%台後半と、2011年の調査開始以来の最高となった。「上昇する」から「下落する」の比率を差し引いたDIはマイナス67。ランドについては「南アの対外赤字、対外債務が大きく、経済成長ペースは低水準。米国との政治的な対立もあり、下落懸念が根強く残る」(証券会社)という。
ブラジルレアルの下落予想も61%と、上昇予想の10%を大きく上回った。国際通貨研究所の武田紀久子主任研究員は、「10月7日に迫る大統領選は『ブラジルのトランプ』と呼ばれ、過激な発言で知られる右派のボルソナロ下院議員が刺傷されるなど混迷化している。加えて輸出相手国第3位のアルゼンチンが国際通貨基金(IMF)の融資を受けるなど通貨不安のきっかけになりうる要素が多い」と指摘。レアルの先行きについて、タービュラントな(値動きの荒い)展開を覚悟する必要があるという。
米国との貿易戦争まっただ中の中国の人民元はDIがマイナス50と、人民元の切り下げを機に中国株安が進んだ「人民元ショック」の16年以来のマイナス幅に拡大した。「トルコリラ、南アランドなどの下落は、国内個人投資家の外為証拠金取引(FX)がボラティリティを拡大している」との見方も出ていた。(QUICKナレッジ開発本部)
※QUICKでは株式や債券、外為部門などの市場関係者を対象に毎月、足元の景気や相場動向についてアンケートを実施。結果を「QUICK月次調査」として各部門ごとに公表しています。Qr1などQUICKの情報端末では月次調査の詳細とヒストリカルデータをご覧いただけます。