2019年の金融市場では中国リスクが一段の波乱要因になりそうだ。QUICKと日経ヴェリタスが共同で実施した外国為替市場関係者への調査で、中国経済の減速と人民元安の基調が今後も続くとみている人の割合が、それぞれ7割前後に上った。落としどころが見えない米中貿易戦争が引き続き重荷だ。
中国の7~9月期の国内総生産(GDP)の成長率は前年同期比6.5%。政府目標の水準を何とか保ったものの、4~6月期の6.7%から鈍化した。製造業購買担当者景気指数(PMI)や小売売上高など最近の指標も低調で、年後半にかけて減速感が次第に強まっている。
政府の景気刺激策の下支え効果で景気底割れの事態はなさそうだが、貿易戦争のダメージは着実に蓄積。米国はトランプ政権と民主党が対中強硬策で一致しており、11月末に見込まれる米中首脳会談で膠着状態を打開できるかどうかは不透明だ。
農林中金総合研究所の南武志主席研究員は「日米貿易摩擦の歴史をみると1990年代後半に日本が深刻な景気後退に陥ると対日圧力は弱まった。同様に、中国が脅威の存在でなくなるまで米国は圧力をかけ続けるのではないか」と話す。
調査では、中国経済のリスクとして「貿易摩擦」(52%)に次いで「過剰な債務や投資」(40%)を指摘する回答も目立った。米国の圧力と根深い構造問題の挟み撃ちになっており、19年は経済成長が「さらに減速」(9%)、「緩やかに減速」(65%)するとの見方が多い。
こうした市場の懸念をすでに織り込み始めているのが、上海総合指数の落ち込みや人民元の下落だ。
とりわけ、じりじり下げ基調だった人民元相場は現在1ドル=6.9元台で推移。人民元急落を防ぐため中国人民銀行(中央銀行)が断続的に元買い・ドル売り介入を繰り返しているとされ、多くの外為市場関係者が節目と意識する「1ドル=7元」を巡る攻防が当面の焦点になる。
調査では「7元を超えて小幅な元安が進む」とみている人の割合が60%、「さらに急激な元安になる」が5%だった。
三井住友アセットマネジメントの深代潤執行役員・グローバル戦略運用グループヘッドは、貿易摩擦を機に中国と米国のルールが変わったため、1ドル=7元にあまりこだわらなくてよいとしつつも「米国向け輸出に頼れない中で、財政政策や規制緩和を活用しつつ、持続可能な水準に成長率を減速させていく。この過程で一定の元安が進むだろう」と分析する。
市場関係者の間には3年前の中国発の金融不安「チャイナ・ショック」の生々しい記憶がある。中国株や人民元の一段の下落は、世界的な株安や新興国通貨安といったリスクオフに直結し、円買いを呼びやすい。一方で人民元安・ドル高は間接的にドル高・円安にもなる。今回の調査では、大幅な人民元安になった場合のドル円相場は「円高・ドル安」に振れると警戒する声が78%に上った。
月次調査は12~14日に実施し、金融機関や事業会社の外為担当者96人が回答した。(QUICKナレッジ開発本部 根岸てるみ)
※QUICKでは株式や債券、外為部門などの市場関係者を対象に毎月、足元の景気や相場動向についてアンケートを実施。結果を「QUICK月次調査」として各部門ごとに公表しています。ヒストリカルデータも含めて、QUICKの情報端末からダウンロードできます。