今回は9月27日に開催されたマレットジャパンのオークションから、1955年に具体美術協会に参加し、具体の理念と活動を体現した田中敦子(たなか・あつこ、1932~2005)を紹介する。
田中の代表的な作品として、合成樹脂エナメル塗料で塗り分けられた数多くの電球・管球を組み合わせて制作した「電気服」が挙げられる。本人が「電気服」を実際に着用し、舞台上で行ったパフォーマンスなどでも話題を集めた。
1950年代後半からは、電球や電気配線のデッサンから大小さまざまな大きさの円や曲線・複雑に絡み合う線をモチーフに自身の世界観を描き続けた。主に合成樹脂エナメル塗料を多用して描く色彩豊かな作品は、鑑賞者を魅了する。
2012年には、東京都現代美術館とイギリスのアイコンギャラリー、スペインのカステジョン現代美術センターとの共同企画で大規模な回顧展が開催されるなど、海外での評価も高い。
本セールでは、2002年に制作されたキャンバス・合成樹脂エナメルの12号サイズ作品「02g」が出品された。落札予想価格400万~600万円のところ、470万円で落札された。
類似作品を抽出分析したACF美術品パフォーマンス指標(注*)を見てみると、2014年から2016年にかけての落札価格の平均は右肩上がりで推移している。(注*2018年は類似作品の出品がなかったため、ACF美術品パフォーマンス指標・時価指数ともに、2014~2017年および2019年の5年間のデータでグラフ化)
2014年に約617万円だった落札平均価格は2016年には約799万円に上昇している。グラフのデータには含まれないが、2015年7月には、同オークションハウスで、2m近い大型作品が1億2000万円(落札予想価格5000万~7000万円)の高値で落札されており、他の作品においても高評価を印象付けるような機運の高まりがあったかもしれない。
2017年に落札価格の平均は561万円まで下落するが、2019年に約742万円となり、再び上昇している。各年ともに落札予想価格の下限を下回ることなく推移しており、時価指数もほぼ横ばいで安定している。
本セールでは、国内外作家116名(国内66名、海外50名)の182作品がセールにかけられ、その内訳は 絵画作品71点、版画作品(写真含む)97点、立体・彫刻・その他(グッズ含む)14点となっている。落札総額は1億1697万円(落札手数料含まず)、落札率は75.8%(落札点数138)だった。
ディヴィッド・ホックニーのリトグラフ作品「水のリトグラフ(線、2種類のライトブルーの淡彩)」が、落札予想価格400万~500万円のところ、850万円で落札され、今回のオークションでは最高額での落札となった。次いで草間彌生のシルクスクリーン作品「ブドウ」が落札予想価格200万~300万円のところ530万円、「黄色かぼちゃ」が予想価格300万~400万円のところ480万円という結果で、いずれも落札予想価格上限を超える高額での落札となった。草間彌生は合計5点の出品があったが、うち4点は300万円を超える金額で落札されており、変わらぬ活況を見せている。特に高額落札の「ブドウ」は、ラメを施す制作工程の複雑さから、予定50部のうち10部しか制作されなかったというエピソードを持ち、その希少性が結果に反映されたといえよう。
(月1回配信します)
※アート・コンサルティング・ファーム提供 ⇒リポート全文はこちら
次回のマレットオークション開催予定 2019年12月5日