7月18日(木)に開催されたマレットジャパンの”M-Live Auction”と近現代美術のオークションSale#240718のオークションをレポートする。オンラインだけの開催となるM-Live Auctionでは、落札予想価格平均15~21万円程度の作品が82点出品された。落札総額は1130万円、落札率は70.7%であった。一方、会場で開催されたセール#20240718では、落札予想価格平均112~167万円程度の作品が115点出品され、落札総額は1億8965万円、落札率は82.6%を記録している。2つのセールの落札率は77.7%、落札総額は2億95万円(落札手数料含まず・以下同)と高記録を達成し、活気あるセールとなった。
抽象表現主義のサム・フランシス、予想上限の約3倍の価格で落札
最高額で落札されたのは、今回のオークションカタログで表紙を飾った草間彌生の0号のオリジナル作品LOT.57《南瓜》(18.0×14.0㎝、キャンバス・アクリル)で、落札予想価格4000~6000万円のところ、6000万円で落札された。他にも、木版画やレリーフなど7点の出品があったが、全ての作品が落札予想価格以上で落札されている。草間作品だけで落札総額は、1億310万円を記録した。
他、ベルナール・ビュッフェ、マルク・シャガール、モーリス・ユトリロなど海外作家の好調が目立った。
落札予想価格を大幅に上回る落札で盛り上がる競りを見せたのは、アメリカの抽象表現主義の画家サム・フランシスの3連作、LOT.11《An Other Set-Y(Triptych);「The Pasadena Box」より》(39.4×172.0㎝、パネルに紙・リトグラフ)。落札予想価格35~45万円のところ、落札予想価格上限の3.1倍となる140万円で落札された。他にも2点の版画作品が出品されていたが、1点は不落札、もう1点は落札予想価格上限での落札となっている。
22年から流通の新進作家、代表シリーズ作品の落札価格は落ち着いてきたか
今回は、橋本ユタカ(はしもと・ゆたか、1979-)にスポットを当てる。橋本は、白い背景上に独自のキャラクターを残像のように重ねて描いた作品を発表している。2022年から国内市場を中心にオークションで流通がみられ、出品当初からアートコレクターの注目を集めている作家である。
本セールではオリジナル作品が2点出品された。LOT.033《無のための習作(見た目は偏りを生むのか#017)》(100.0×80.3㎝、パネル・アクリル)は、落札予想価格35~45万円に対し、60万円で落札された。続くLOT.034《無のための習作(2つの肖像画#006-1)》(145.5×122.0㎝、キャンバス・アクリル)は、落札予想価格50~70万円に対し、上限同額の70万円で落札されている。
どちらも橋本を代表するシリーズ作品《無のための習作》ではあるが、LOT.033と同じ《見た目は偏りを生むのか》シリーズ、同一サイズの落札データを抽出分析したACF美術品パフォーマンス指標から動向をみる。2022年には落札予想価格22~37万円に対し、落札予想価格上限を大幅に上回る142万円程度の落札となっている。翌2023年では落札予想価格平均が30~50万と若干上昇するが、落札価格は、56万円程度と下降する。2024年は、落札予想価格上限、落札価格に若干の下降が見られるが、ほぼ横ばいである。同一作品の落札結果をみると、2022年7月には48万円、2023年5月には26万円、今回のセールでは60万円と一番良い結果を残している。
2023年以降下落している印象も受けるが、出品当初の急騰が目立つ為であり、現状では落札予想価格程度に落ち着いている。まだオークションへの出品が少ない新進作家のこれからの活躍に期待が高まる。
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※次回のマレットオークション開催予定は10月10日
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