QUICKコメントチーム=根岸てるみ
自宅や出先で仕事をするテレワークなど自由な働き方が日本でも広がりつつある。日本経済新聞社が11月に公表した2019年の「日経スマートワーク経営調査」では、在宅勤務を取り入れている企業は前回の調査比較で8.8ポイント増加し、半数(53%)を超えた。調査の有効回答数は上場企業と有力な非上場企業を合わせた708社だ。
在宅勤務の目的は人材の確保や生産性の向上などがある。生産性については検証しにくい面もあるが、総務省は2018年版の情報通信白書の中で成功事例の一つとして日本マイクロソフトを挙げている。書類をすべてデジタル化してクラウド環境を整えるなど、社内外の環境を同一に近づけたことで一人当たりの売上高が26%増加し、残業時間は5%減、交通費は20%減少する効果などが得られたという。
働き方改革を積極的に進める企業の株価が市場平均を上回ることは、19日に配信した前回記事でも紹介したが、期間を変えてみても同じ結果が出ている。「日経スマートワーク経営調査」の総合評価で最高水準である五つ星を獲得した23社をバスケットにした「総合・五つ星」は年初から先週末までに23%上昇し、約19%の東証株価指数(TOPIX)と21%の日経平均株価を上回った。
「総合・五つ星」の23社は、アサヒグループHD、キリンHD、日清食品HD、旭化成、三菱ケミカルHD、塩野義製薬、ZHD、富士フイルムHD、コニカミノルタ、資生堂、コマツ、ダイキン工業、日立製作所、ソニー、イオン、みずほFG、東京海上HD、ソフトバンク、NTTドコモ、NTTデータ、SCSK、ファーストリテイリング、サントリーHD
さらに注目されるのが、分野別評価の「人材活用力」だ。この分野で最高の五つ星だったNTTデータ(9613)とSCSK(9719)をバスケットにした指数は約29%の上昇で、TOPIXをさらに大きくアウトパフォームする。多様で柔軟な働き方や、人材に積極投資する企業は株式市場で高い評価を受けていることがはっきりわかる。
NTTデータでは今回の評価について、自社のウェブサイトで「中期経営計画で目標に掲げるビジネスのデジタル化などを推し進めるため、デジタルを活用した働き方変革をよりいっそう推進させる」としている。
日本では、オリンピック開催に向けて交通の混雑を回避する目的で在宅勤務を導入する企業が増えそうだ。ちなみに、日本のはるか先を行っている米大手ハイテク企業の間では気になる動きもある。アルファベット傘下のグーグルはカリフォルニア州サンノゼに建設予定の巨大な本社を拡張しようとしている。フェイスブックも同様で、業容拡大で従業員が増えているのに加え、従業員を一定の場所に再集結させているのかようにみえる。
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