QUICKコメントチーム=川口究
2019年下半期以降、急ピッチで上昇した日本株。米中の貿易交渉の第1段階の合意とそれを背景とした業績底入れを先取りした形での上昇だったが、今後の市場の関心はEPS(一株利益)の上昇トレンドへの転換が確認できるかにシフトしていきそうだ。
DIは2カ月連続で改善
先日発表された1月の「QUICK短期経済観測調査(QUICK短観)」で製造業の業況判断指数(DI)はプラス5と12月調査から3ポイント改善した。指数の改善は2カ月連続となった。生産・営業設備のDIはマイナス6と12月の調査から2ポイント低下、雇用人員のDIもマイナス29と12月調査から7ポイント低下と、設備や人員への不足感が高まっている。
製造業DIが上向く状況においては、株価は下げにくく上昇しやすい。
「業績は第4四半期以降に期待」
岡三アセットマネジメントの前野達志シニアストラテジストは、「19年下半期以降、日本株は米中交渉の第1段階の合意とそれを背景とした国内企業の業績底入れを先取りする形で上昇した。米中の貿易交渉についての材料はいったん出尽くしたと考えられるため、市場の関心はEPSの上昇トレンドへの転換が確認できるかにシフトしたであろう。来週から3月期末企業の第3四半期決算発表が本格化するが、前年同期比で減益であったとしても、受注状況などで底入れを確認できるなど第4四半期以降の業績に期待が持てる内容となるかが注目される」との見方を示し、日銀短観に先行して改善を続けるQUICK短観に「金融相場から業績相場への移行を示す兆しが現れ始めたのではないか」と指摘した。
また、極東証券経済研究所の佐藤俊郎主席アナリストは「今回の調査は20年1~3月期の初月にあたる。当研究所で試算した225銘柄の業績予測は純利益ベースで20年1~3月期に増益に転じており、今回の調査結果と整合的だ」と指摘した。
企業が見込む20年の高値は「2万5000円」
今回のQUICK短観では、20年の日経平均株価がどう動くと予想するかを調査している。QUICK短観調査対象企業の多くが年間の最高値を2万5000円程度とみていたが、両氏は2万6000円程度まで上昇すると見込む。企業から寄せられたコメントではイラン情勢の緊迫化など地政学リスクの高まりによる為替や株価の変動を懸念する声が聞かれた一方で、両氏の見方は「イラン情勢の緊迫化でも期待が剥落することなく株価は堅調さを保った。年央にかけてEPSの切り上げとともにバリュエーションの拡大が期待できる」というものだった。
QUICK短観は上場企業を対象に毎月実施している。今回の回答期間は1月6~13日で、352社(金融機関を含む)が回答した。
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