2019年12月5日に開催されたマレットジャパンのオークションから、ロッカクアヤコ(1982~)についてリポートする。
ロッカクアヤコは筆などを一切使わず、手で直接キャンバスやダンボールにかわいらしい色使いで少女などを描く作風が特徴のアーティストである。2004年に村上隆主催のGEISAIでスカウト賞を受賞して注目され、2006年スイス・アートバーゼル出展時に行ったライブペインティングでは100枚以上を描き、完売。それをきっかけに欧米での人気が高まり、現在はオランダで活動している。
■キャンバス作品は今回オークションの最高落札額
以前のコラム(2018年8月28日配信「注目の新鋭ロッカクアヤコ、1000万円超えも」)では彼女の油彩を取り上げた。今回は同一のモチーフで複数エディション(部数)制作されるマルチプル作品に改めて注目したい。
出品されたのは3点。オークション全体の最高額となった「作品」(キャンバス・アクリル、116.5cm×91.0cm)は落札予想価格600万~800万円のところ、1150万円で落札された。油彩の「作品」(ダンボール・アクリル、41.0cm×45.0cm)は落札予想価格150万~200万円のところ、200万円で落札されている。マルチプル作品である「無題」(58.2cm×78.0cm、リトグラフ)は、落札予想価格50万~70万円に対して落札価格は63万円だった。
ロッカクアヤコのマルチプル作品はこれまであまり制作されていないため希少で、また近年作品は大型化している。マルチプル作品を抽出分析したACF美術品パフォーマンス指標(ACF美術品パフォーマンス指標・時価指数ともに、2017年は国内でマルチプル作品の出品がなかったため、2014~2019年のうち2017年を除いた5年分のデータから作成)を見てみると、2016年までは横ばいで、2019年に落札価格の平均が若干下落するが、全体的にはこの2年間、落札価格は右肩上がりで推移している。時価指数も同じ動きをしている。
ロッカクアヤコの作品は、3月に行われるアートフェア東京2020(GALLERY TARGET)に出展予定とされているので、興味のある方には良い機会となるかもしれない。
■井上有一も高額落札、人気安定の草間彌生
マレットジャパンのオークションは、ジャンルにとらわれることなく、国内作家の高額作品および国際市場性のある海外作家の高額作品を重点的に取り扱う。国内外の作家107名(国内59名、海外48名)225作品がセールにかけられ、落札総額は1億2253万5000円、落札率は70.7%だった。
最高額だったロッカクアヤコ作品に次いで、戦後世界的に高い評価を得た数少ない日本の書家である井上有一の作品「吸」が落札予想価格250万~450万円のところ上限に近い440万円で落札された。また草間彌生のマルチプル作品が8点出品され、どれも落札予想価格上限を上回る落札結果となり、安定した人気をみせた。(すべて落札手数料を含まない金額)
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※マレットジャパンの次回開催予定は2月28日
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