日経QUICKニュース(NQN)=菊池亜矢
日経平均株価が今年最大の上げ幅となるなど、にわかに強まったリスクオンの雰囲気にも債券市場の参加者は冷静だった。象徴的だったのは財務省が6日実施した30年債入札だ。新型肺炎の感染拡大への行き過ぎた警戒感の後退や日銀が超長期債の買い入れ減額を示唆したのを受け、金利は上昇(価格は下落)基調にあった。とはいえ、金利の先高観が高まるわけでもなく「0.4%台前半」を買えると判断した投資家が多かった。
■応札倍率は前回以上、テールも縮小
「どこからみても順調」「強い」――。30年債の落札結果に対する市場参加者の評価だ。最低落札価格は99円25銭(最高落札利回りは0.428%)と、日経QUICKニュース社が締め切り直後に聞き取った予想で最多だった99円20銭を上回り、予想範囲(99円15~25銭)の上限に決まった。応札額を落札額で割った応札倍率は前回を上回ったほか、最低と平均の落札価格の差(テール)は5銭と前回の8銭から縮まった。
超長期債を取り巻く環境は悪化していた。1月末に日銀が公表した2月のオペ(公開市場操作)方針では「10年超」の月間買い入れ回数を3回から2回に減らし、月間ベースで超長期債の購入額減が示唆された。市場では「回数減には日銀が超長期金利のさらなる低下を防ぎたい強い意図がうかがえる」(SMBC日興証券の竹山聡一氏)との声が広がった。
金利低下を防ぎたい日銀の意図を「忖度(そんたく)」してか、2月以降の30年債利回りは上昇基調だった。前日夕には新型コロナウイルスに対する有効なワクチン開発につながるとの期待を誘う報道が相次いだこともあり、30年債利回りは入札締め切り直前には0.43%とほぼ2週ぶりの高い利回りで推移していた。入札前に利回り上昇が進んだのが、結果的に投資家の需要を喚起するという皮肉な結果になった。
■利回り求める余剰マネーの流れ太く
入札結果が順調でも債券相場全体に影響が波及しにくいのが最近の傾向になりつつある。6日は中国国務院(政府)が米中交渉の「第1段階」の合意に沿って、14日から米国から輸入する約750億ドル分の製品の追加関税を引き下げると発表したのを受け、株買いや債券先物売りが急速に強まり債券先物は一時ほぼ2週ぶりの安値を付けた。
もっとも、「余剰資金の受け皿としてプラス利回りの債券需要は消えない」(国内銀行の円債担当者)。30年債は利回りが前日比で横ばいになるまで買われた。「新型肺炎の警戒感が根強いためリスクオン一色にはならない。金利上昇のイメージは簡単に持てない」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の稲留克俊氏)。金利水準の低位安定はなお続きそうだ。
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