日経QUICKニュース(NQN)=桶本典子、写真=Yifan Ding/Getty Images(2月3日撮影)
中国株式相場の戻り歩調が続いている。新型肺炎の感染拡大が収まる気配が見えないにもかかわらず、上海総合指数は前日12日まで7日続伸した。肺炎拡大による経済活動の停滞が中国政府による景気対策への期待を強め、買いが優勢になるという構図だ。
■新興企業向け「創業板」は3年2カ月ぶり高値圏
上海総合指数は春節(旧正月)の連休明けとなった3日に7.7%安と急落したが、翌4日からは7日続伸。きょう13日は現時点で小安く推移しているが、朝方には前日比0.3%高の2935まで上げる場面があった。チャート分析では、連休前の1月23日の取引時間中安値(2955)と連休明け3日の同高値(2766)の間に大きくあいた「窓」を埋めるのは目前という状況だ。深セン市場では、新興企業市場「創業板」指数がおよそ3年2カ月ぶりの高値圏にある。
強気を保つ投資家心理の根底には、同じコロナウイルスに起因した肺炎である重症急性呼吸器症候群(SARS)の流行時における、香港・ハンセン指数の戻りという「成功体験」があるようだ。SARSは2002年11月に最初の症例が確認され、03年7月に世界保健機関(WHO)が終息宣言を出した。当時香港は流行の中心地の1つで、03年のハンセン指数は9300台から4月には同年の安値である8409まで下落した。だが、中国と香港の両政府が両地間の関税を引き下げる経済緊密化協定(CEPA)などの景気対策を実施。ハンセン指数はV字回復基調となり、07年秋まで4年あまりの長期上昇相場の起点となった。
■人民銀は最優遇貸出金利の引き下げ示唆
今回も政府の対応は速い。上海市政府は7日、28項目の景気支援策を打ち出した。中国人民銀行(中央銀行)高官も20日に定例見直しを予定する、優良企業向け融資の指標となる最優遇貸出金利(ローンプライムレート、LPR)の引き下げを示唆した。
ただ「08年の金融危機後の4兆元の景気対策のような大規模な支援策は、その後の地方債務拡大などの後遺症の深さを考えると打ち出せない」(第一上海証券ストラテジストの葉尚志氏)との見方はある。10日発表の1月の消費者物価指数(CPI)は8年3カ月ぶりの上昇率となったため「人民銀は金融緩和に踏み切りにくいのではないか」(香港証券会社の交銀国際の13日付リポート)との観測もあり、景気対策期待が肩すかしとなる可能性はあるだろう。
それでも現時点では政策期待が上回っているうえ「感染症による経済への影響はあくまで短期的」(中国投資銀行の中国国際金融の4日付リポート)との楽観論も目立つ。中国の市場関係者は既に、現状の直視より「肺炎後の回復」を先取りする雰囲気が優勢になっている。
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