QUICK編集チーム=伊藤央峻、写真=Kevin Frayer/Getty Images
外国為替市場で、新型肺炎「COVID-19」の感染拡大による影響の長期化への懸念が広がってきた。QUICKと日経ヴェリタスの共同調査で、市場のリスク回避姿勢はいつまで続くかを聞いたところ、回答者の4人に1人(26%)が東京オリンピック開催の「7~8月まで」と回答した。感染源である中国の経済成長率見通しは1~3月期に4%強、20年通年で5%程度へ急減速し、世界全体の成長率を大きく押し下げるとの見方が多い。
「3月末までで織り込み」6割、株式相場は楽観気味だが……
新型肺炎によるリスク回避の期間を聞いた質問で最も多い回答は「3月末まで」の41%。住友商事グローバルリサーチの鈴木将之シニアエコノミストは「それまでに悪影響を織り込み終えるだろう」と話す。
「すでに終わった」「2月末まで」をあわせると、それほど長期化しないとみているのは全体の6割。実際、米ダウ平均株価は3万ドル台へ向けて堅調なほか、春節休暇明けに急落した上海総合指数もその後7営業日続伸するなど、株式相場はそうした見方を先取りするような動きになっている。
ただ2002~03年の重症急性呼吸器症候群(SARS)は感染拡大から終息まで半年以上かかった。COVID-19はSARSより感染力が強いとされるうえ、中国発のヒト、モノの流れは当時と比べて格段に太くなっている。
2020年の世界の成長率は3%割り込む可能性
このため、今回の調査では回答者の3分の1を占める事業会社で慎重な見方が目立つ。サプライチェーンや訪日客需要への打撃懸念から、事業会社の回答の7割強がリスクオフ局面は3月末までで終わらないと考えている。
自動車メーカーが中国国内の工場の再稼働を延期するなど、実体経済への打撃は日に日に増している。中国の成長率が1%低下すると世界の成長率を0.2~0.4%押し下げるとされる。国際通貨基金(IMF)の1月20日時点の見通しでは2020年の世界の成長率は3.3%だが、月次調査の回答者の多くはこれが3%に下振れするとみている。予想の平均値は2.7%だ。
もっとも、為替相場の波乱を予想する声は少ない。3月末の円相場の予想は1ドル109~110円(34%)または108~109円(21%)、人民元相場も1ドル7.0~7.1元(39%)と現行水準とあまり変わらない。中国人民銀行が短期金融市場で大量の資金を供給して人民元の下落に歯止めがかかっているという現状を踏まえた見立てになっているようだ。
調査は10~12日に実施し、金融機関や事業会社の為替関係者91人が回答した。