証券アナリスト=三浦毅司(日本知財総合研究所)
今や世界のあらゆる場所を飛び回るドローン。人間がアクセスしにくい場所での情報収集や物資の輸送などに大活躍している。実用化され出したのはここ5年ほどで、技術革新は引き続き活発だ。
特許の評価ランキングで海外企業が上位だが、個々の特許評価は高くない。国内では大企業の他、ベンチャー企業や測量大手などが有力特許を持っており、今後の特許活用が注目される。
■急増するドローン関連特許
かなり普及した感があるドローンだが、その技術開発が始まったのは2005年以降で、特許出願で実用化が意識されだしたのは2010年ごろ。2016年ごろから特許出願が飛躍的に増加し、2017年、2018年には年間1700件を超えるまでになった。
出所:PatentSQUAREにより日本知財総合研究所作成
出願人の顔ぶれは国内外の有力メーカーからベンチャー企業まで幅広く、今後も出願数は順調に増加することが予想される。
■情報通信技術からビジネス特許まで幅広く
特許価値評価ツールの「KKスコア」を用いて、ドローンに関する有力な特許の総合力をみてみると、クアルコム(米国)が突出し、2位のSZ・DJI(中国)、3位の鴻海(台湾)と海外勢が登場。4位にパナソニック、5位にZホールディングスの国内勢が続いた。
特許出願分野が多岐にわたるのがドローン特許の特徴といえる。クアルコムはワイヤレス通信における安定した情報通信にかかる特許が主体であるのに対し、SZ・DJIは直接的にドローンを使ったビジネスに係るシステムの特許が中心だ。
しかし、1件当たりの特許の評価でみると上位の顔ぶれはガラリと変わる。
出所:PatentSQUAREのデータを元に日本知財総合研究所作成
TOP3は、ドローン計測を手掛けるベンチャー企業、アミューズワンセルフ(大阪市)、ドイツポスト(独)、衛星測量大手の日豊(川崎市)。いずれも出願件数は多くないが、保有している特許の重要性が大きい。
1位 アミューズワンセルフ 無人飛行体に関する特許(特許第6261090号) |
2016年5月に出願され、同年12月に公開された。この発明では、パノラマ画像を撮影する場合どうしても画像に写り込んでしまう自身のドローンを、2台のカメラで撮影した画像をオーバーラップさせて自機が写らないようになることを可能にした。2018年7月に同特許に関する異議申立が出されたが、2019年9月に一部修正の後、特許の有効性が確認された。
ドローン撮影の需要は今のところ2次元のものが多いが、将来的にVR(仮想現実)の発展とともに3次元画像の需要拡大が見込まれる。この技術によって効率的な3次元映像の撮影が可能になることからKKスコアが高くなったようだ。
■2位 ドイツポスト 無人運搬装置によって貨物を配達するための方法に関する特許(特許第6390068号) |
2015年4月に国際出願され、日本では2017年6月に公開された。この発明は、ドローンによって貨物を貨物用収容コンテナに配達するための方法に関するものである。特許では、ドローンが貨物用収容コンテナまで飛行した後、収容コンテナに着陸し、電子許可情報をやり取りするまでの一連の方法だけでなく、ドローンと収容コンテナそのものも対象とした。
将来的に無人での荷物搬送を可能にするもので、実用化に向けた準備が進んでいる分野である。特許の対象が幅広く、この特許を侵害しないような技術開発を行うことが窮屈であることからKKスコアの評価が高くなったとみられる。
■3位 日豊 ダイナミック座標管理装置、ダイナミック座標管理方法、プログラムに関する特許(特許第6528293号) |
2018年5月に出願され、20019年11月に公開された。クルマの自動運転などに必要な位置情報の測定にあたって、国土地理院が定める電子基準点や複数のGPS衛星から受信した信号に基づく推定ではなく、地殻変動に基づいて地図情報を更新する。これにより正確な位置情報を提供できるようにする。
国土地理院の電子基準点は更新頻度が低いうえ、GPS衛星からの情報は不安定さがつきまとう。そうした中で今後、自動車やドローンの自動運転に欠かせない正確な位置情報の把握に関する特許だけに、重要性は増すものと思われる。(2020年2月27日)
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