日経QUICKニュース(NQN)=三好理穂
24日の東京市場で、不動産投資信託(REIT)の総合的な値動きを示す東証REIT指数が連日で急伸した。前週末19日までは新型コロナウイルスの感染拡大を受けたリスク資産処分の動きに、年度末を控えた地銀のロスカット(損切り)も加わって急激な調整を迫られていたが、今週は一転して底入れ基調を鮮明にしている。市場では当面、大きな流れとしては戻りを試す展開になるとの見方が多い。
■1カ月半で半値→3割戻し
東証REIT指数は直近高値を付けた2月20日(2250.65)から19日(1145.53)まで、わずか1カ月で半値となったが、今週は現時点までで3割近く戻した。REIT市場の売買代金は前週までとほぼ同水準のため、損切りや利益確定の売りも出ているとみられるが、今週は一転して買いの勢いが上回っている格好だ。
今週の急伸について、みずほ証券の大畠陽介シニアアナリストは「短期筋に加え、不動産に特化したロングオンリー(買い持ち専門)の海外投資家の買いが中心」とみる。さらに、一部の地銀も「(平均取得単価を下げる)ナンピン買いに加え、相場急落前に益出しをしていて余裕があるところは買いを入れているようだ」と話していた。
■適正水準「1800」
見直し機運の背景にあるのが「売られすぎ」の反動と割安感だ。SMBC日興証券の鳥井裕史シニアアナリストは、東証REIT指数について「1800程度が適正水準」との見方を示す。REITとクレジット市場の連動性の高さに着目し、東日本大震災や欧州債務危機があった11~12年のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)水準を前提に換算。低金利環境は当時と類似しており、過去のREIT調整局面でさらにCDSが上昇していた08~09年ほどには資金繰り懸念が強まっていないためだ。
みずほ証券の大畠氏もREITのPBR(株価純資産倍率)に相当するNAV(ネット・アセット・バリュー)倍率について、同証券による2020年度のNAV想定を基準とすると、同倍率が1倍にあたる1800程度が戻りのメドと見込む。
■買いは物流、住宅
個別では投資先の物件によって格差が出ている。新型コロナの感染拡大による外出控えで、通信販売の利用や在宅勤務の増加への連想が働く物流施設や住宅系が買われ、商業施設やホテル系が苦戦する構図だ。物流系の日本プロロジスリート投資法人(3283)の分配金利回りは3%台と比較的低く、相対的に評価が高いことを示す。一方、総合型のユナイテッド・アーバン投資法人(8960)はきょうストップ高で終えたが、利回りはまだ7%台と高い。ホテルへの投資比率が全体の9割弱を占めるインヴィンシブル投資法人(8963)の利回りはいまだ14%超だ。感染拡大が落ち着けば、格差是正の動きが進むとの見方が多い。
■死角は…
先行きには依然として慎重な見方もある。モルガン・スタンレーMUFG証券の竹村淳郎株式アナリストは19日付で、J-REITの業界投資判断を3段階で最上位の「アトラクティブ」から最下位の「コーシャス」に2段階引き下げた。今後の不動産価格の下落が意識される中で、13年以降の金融緩和環境下で流入した資金が逆流し始めるとの見方だ。竹村氏は同日付のリポートで、需給面でも投資信託からの売り圧力が強まる可能性を指摘。基準価額の急落で投資信託の分配金利回りは上昇するため、投資信託が配当金を切り下げる動きが加速すれば解約の増加などを通じたREIT売りにつながるとの見方を示した。
今週の日経平均株価は急激な戻りとなっているが、再び世界的な景気悪化などを反映した株価急落が起きれば、REITも換金売りや投信売りなどに押される可能性はある。割安感は確かに強いものの、当面は不安定な値動きが続きかねない点は気に留めておく必要がありそうだ。
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