NQN香港=桶本典子、林千夏
25日のアジアの株式相場が全面高となっている。フィリピン総合指数が一時前日比6%超高となったのをはじめ、韓国総合指数(KOSPI)や台湾加権指数も約5%上昇する場面があった。前日の米国株が新型コロナウイルス対応の大規模な経済対策を巡る楽観から急伸し、アジアの株式市場でも過度なリスク回避姿勢が和らいでいる。現地の市場関係者に、現在のアジア株の状況や今後の展望を聞いた。
■アジアの感染落ち着きを評価 4月以降に相場安定か
香港の勝利証券の施タン資産管理責任者
前週までの世界株安のなかで、世界の投資家は金融商品投資を控え現金化を急ぎ、足元ではより安全とみられる運用先を探していた。日本や韓国、中国をはじめとするアジア地域は新型肺炎の感染拡大が抑えられていたり、ピークを越えたりしたとの評価があり、感染の深刻な欧米に替わる投資先として選ばれた面がある。
ただ、上昇は一時的にすぎない。世界景気の減速傾向は変わっていないため、世界の株式相場の下落基調は当面続くだろう。やや落ち着くとすれば4月以降ではないか。3月下旬は四半期末に当たり、そもそも持ち高調整の売りが出やすい時期だ。より長期の相場動向を見極めるには、米国の経済対策の効果がどの程度かの結果を待たねばならない。
原油先物相場については一段の下落は懸念していない。中国で産業活動が回復に向かえば、原油需要の刺激が期待できるからだ。原油相場が落ち着くことで世界の投資家心理も極度の悪化から持ち直すだろう。
■アリババなど中国の優良銘柄の下げ余地は限定
香港の証券会社、京華山一国際の彭偉新・研究部主管
米連邦準備理事会(FRB)がゼロ金利政策を復活させ、米国債や住宅ローン担保証券(MBS)の買い入れ量を当面無制限にすると発表した。米国が景気下支えの姿勢を強めているのが市場心理の短期的な改善につながっている。信用力の高い投資適格債の一部でさえ値がつかない日が続いたが、きょうは売買が成立している。これも過度なリスク回避姿勢の後退を示している。
ただ、投資家心理が一気に晴れたと言うのはまだ早い。欧米で新型コロナの感染者が増え続けており、死者がどこまで出るかも不透明で、かなり混乱している。金融市場はこの混乱ぶりを素直に反映しているため、株式市場がいつ上向くかはやはり感染状況次第となってしまう。
一方、中国本土や香港は基本的に感染拡大が抑えられている。世界的な株安で値ごろ感が増した優良銘柄は下落余地が限られるため、いまは買いの良いタイミングではないかとみている。特に中国ネットサービスの騰訊控股(テンセント)や中国電子商取引(EC)最大手アリババ集団、また生活関連銘柄などの株価は、新型コロナ問題が改善するにつれて上向くだろう。
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