日経QUICKニュース(NQN)=山田周吾
全面安の様相だった商品先物相場の中から、自動車の排ガス触媒に利用されるパラジウムが一足早く抜け出そうとしている。新型コロナウイルスの感染拡大で自動車の生産・販売が滞るとの見方から3月下旬まで相場を急落させてきたが、足元では急回復している。主産国の南アフリカのパラジウム鉱山が閉鎖され、供給不安が強まったのがきっかけだ。
■東京のパラジウム相場はサーキットブレーカー発生
東京商品取引所のパラジウム先物は27日こそ利益確定売りが優勢になっているが、26日までの5営業日では1グラムあたり2937円(55.4%)上昇し、26日の清算値は8235円と2月28日につけた過去最高値(9660円)に迫る勢いだ。26日には上げ幅が1000円に達し、東京商品取引所は売買を一時中断する措置(サーキットブレーカー)を発動した。
今月のパラジウムの値動きは荒い。19日には心理的節目である5000円を割り込む直前の水準まで売られていたばかり。新型コロナの影響で米欧各国が人の往来を制限し、自動車販売の停滞が明らかになるにつれ、売りが膨らんだ。もっとも15日に米連邦準備理事会(FRB)が緊急利下げに踏み切り、各国の中央銀行の金融緩和が相次ぐと、パラジウム相場の下落は止まり始めていた。
■コロナ問題で南ア鉱山が生産停止
そこに新たな買い材料が加わる。南アでは新型コロナの感染拡大が急で日本時間27日から全土で外出規制を始めた。今後3週間、ほとんどの国民が自宅にとどまるように義務付けられている。少なくともその間はパラジウム鉱山での生産活動は停止する。慢性的な需給逼迫が続いているパラジウムに目を付けていた投資家は、南アの供給不安にいち早く目を付け、買いを入れていたようだ。
市場関係者の間ではパラジウムが過去最高値を再び更新するとの見方が、今のところは有力のようだ。岡地の田栗満貴金属アナリストは「新型コロナ問題が収束に向かえば1グラム10000円の大台を更新する可能性もある」という。日本貴金属マーケット協会の池水雄一氏は「今夏には中国が環境規制を強化するため、排ガス触媒の使用量が増える」と話す。
ただ最近の急激な値動きはあまりに投機的だとし、懐疑的な見方も出始めている。世界的に自動車の生産・販売の停滞が広がっているためだ。コメルツ銀行は26日付のリポートで、欧州や北米で自動車生産が止まっていることを指摘。今の状況が1カ月以上続くとすると、最近の価格上昇は「正当化できない」としている。流動性が少ないため、相場が乱高下しやすいパラジウムだが、より長い目で見れば自動車業界の実需がパラジウム相場の行方を決めるはずだ。