新型コロナウイルスの問題が企業業績を直撃している。主要企業の業績予想の変化を示すQUICKコンセンサスDIは、3月末時点で金融を含む全産業ベースがマイナス43と前月から20ポイント悪化。ほぼすべての業種で大幅に悪化し、日本株全体に弱気な見方が広がっている。2016年2月以来、4年1カ月ぶりの下げ幅を記録した。
■建設、不動産でマイナス幅が急拡大
非製造業DIは前月から18ポイント悪化のマイナス36だった。これまで堅調だった「建設」がマイナス11(前回はプラス7)、「不動産」がマイナス23と(前回はゼロ)とマイナス幅が急拡大した。不動産セクターは資本集約的で財務レバレッジが高く、世界的な信用リスクが高まった局面で、弱気な見方が広がった可能性がある。
製造業DIは前月から21ポイント悪化のマイナス51だった。3月後半に向けて世界的に一段と深刻化した新型コロナウイルス感染拡大の影響が完全に反映されていない可能性もある。特に欧米諸国における感染の急激な拡大やそれに伴う都市封鎖は、製造業、非製造業を問わず大幅な需要減退を招いていると考えられ、今後はさらなる下押し余地もありそうだ。
算出対象16業種のうちすべてでDIがマイナスだっだ。
■コロナの影響が軽微な銘柄
3カ月前の予想純利益と比べて上方修正率が最も大きかった銘柄は、武田(4502)だった。市場予想の平均であるQUICKコンセンサス(3月23日時点、7社)によると、2020年3月期の連結純損益は1100億8100万円の赤字見通しだが、21年3月期は最終黒字に転換する予想だ。活動期潰瘍性大腸炎およびクローン病成人患者に対する治療薬として用いられる「エンタイビオ」の中国での販売許可を取得したことで、利益の上乗せが見込まれる。
このほか、空気圧延機を手掛けるCKD(6407)は半導体製造装置向けが好調で、上方修正銘柄の2位に入り、新型コロナウイル スの影響が限定的であるとみられる銘柄が上位を占めた。
■日産自、JAL、三菱自は大きな下方修正
3カ月前の予想純利益と比べて下方修正率が大きかった銘柄は、日産自(7201)。新型コロナによるサプライチェーンの乱れや国内需要の減少により、30日に発表された2月の国内生産実績では29%減で13カ月連続の減少、海外でも28%減少し、日系自動車メーカー8社の中でも大きく生産を減らした。
このほか上位にはJAL(9201)や三菱自(7211)が並び、新型コロナウイルスの影響が懸念される銘柄が上位を占めた。
(注)QUICKコンセンサスDIは、アナリストが予想連結純利益を3カ月前時点に比べて3%以上、上方修正した銘柄を「強気」、下方修正した銘柄を「弱気」と定義し、「強気」銘柄が全体に占める比率から「弱気」銘柄の比率を差し引いて算出する。DIがマイナスなら、下方修正銘柄が上方修正銘柄を上回っていることを意味している。5社以上のアナリストが予想している銘柄が対象で、主要企業の業績に対する市場全体の期待値が上向きか、下向きかが分かる。
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