日経QUICKニュース(NQN)=藤田心
9日の国際商品市場で原油先物相場が大幅に下落した。石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟産油国で構成する「OPECプラス」は同日、5月と6月に日量1000万バレル減産することで合意した。減産は相場を支える要因ながら、今回の合意内容では新型コロナウイルスの感染拡大に伴う世界的な需要減を補いきれないとの失望が売りを促した。減産の実効性を巡る疑念も残り、相場が急反発に向かうとの期待は乏しい。
■減産規模1000万バレルで失望売り
米指標油種であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で期近の5月物は9日のニューヨーク市場で、前日比2.33ドル(9.3%)安の1バレル22.76ドルで終えた。一時は28ドル台前半まで上昇したものの買いは続かず、むしろ大きく売り込まれた。OPECプラスの減産規模を巡って「最大で日量2000万バレルの減産を協議」との観測報道で買いが一時的に集まったが、結局1000万バレルにとどまり失望売りにつながった。
原油は3月に大きく値を崩した。OPECプラスが3月に開いた会合で、1~3月に取り組んでいた18年秋比で日量170万バレルの減産の枠組みを延長しないと決めたためだ。新型コロナの感染拡大を受けて減産幅を拡大するとの観測も出ていただけに、市場が受けた「ネガティブサプライズ」は大きかった。その分、今回の減産協議への関心は高まっていた。
ニッセイ基礎研究所の上野剛志シニアエコノミストは「減産規模が明確になったことで、供給過剰も明確になった」と指摘する。新型コロナの影響で需要の減少は日量2000万バレルを超えるとの見方もあり、1000万バレルの減産では供給過剰の解消には不十分と受け止められた可能性が高いという。これまでの協調減産の枠組みでも減産の順守率にはバラツキがあり、「実効性にも不安が残る」(上野氏)という。
■新型コロナ見通せず、在庫積み上がりの懸念も
10日には主要20カ国・地域(G20)エネルギー相による緊急のテレビ会議が予定されている。サウジアラビアやロシアはG20産油国がさらに日量500万バレルの減産を担うことを期待しているもようだが、「国営会社を抱えるサウジなどを除けば、政府主導の減産はハードルが極めて高い」(マーケット・リスク・アドバイザリーの新村直弘代表)。OPECプラスの青写真通りの展開を見込む声は少ない。
今後の原油相場について、みずほ証券の中島三養子シニアストラテジストは「4~6月は20~40ドルでの推移になるのではないか」と読む。新型コロナの感染が最初に拡大したとみられる中国・武漢では8日に都市封鎖が解除されるなど、中国の経済活動は回復の兆しがみられる。米連邦準備理事会(FRB)が9日、低格付け債の購入を決めたことも「信用不安を和らげ、原油相場を下支えする」とみる。
もっとも、短期的には下値不安が拭えない。新型コロナ感染の終息が見通せず「原油在庫が積み上がる公算は大きい。供給過剰の懸念が強まった場面では一時的に20ドル割れの可能性もある」(ニッセイ基礎研の上野氏)との声は少なくない。