QUICK Market Eyes=大野弘貴
東証は10日、3月の日本の上場不動産投資信託(J-REIT)の投資部門別売買状況を公表した。
売り越し主体では銀行の462億円、投資信託の268億円の売り越しが目立った。一方、買い越し主体では個人投資家が477億円、海外投資家が343億円となった。3月末を控え金融機関の益出しとロスカットが加速する中、個人投資家と海外が買い向かう構図となった。野村証券の13日付リポートによると、「地域金融機関が主な保有者となっている私募REIT投信の売却も大量に発生した可能性がある」との見方を示している。
■個人投資家の買越額、銀行の売越額が「過去最大」
野村証券の同リポートによると、個人投資家の買い越し額は2008年10月の85億円を上回って過去最大。また、個人投資家が最大の買い越し主体となるのは08年11月、09年2月に次いで3回目だという。
一方、銀行の売り越し額も07年2月の443億円の売り越しを上回り、過去最大となったようだ。
野村証は「個人投資家は3月の相場急落局面を投資の好機ととらえ、J-REIT関連商品に積極的に投資した」との見方を示した。市場参加者からは「個人投資家が短期的な値上がりを求めて買い入れたのか、配当利回りの高さに着目して買い入れたのかによって、今後の相場展開に影響を与えそうだ」(国内証券)との声も聞かれた。
■潜在的な売り圧力に変化なし?
モルガン・スタンレーMUFG証券が10日付リポートで、3月のJ-REITの売買代金に占める外国人投資家の比率が54%と過去最高水準であったことに触れ、「グローバルにREITが大きく調整する中、外国人投資家の中でもジェネラリストが大きく買い越したものとみられる」との見方を示した。また、銀行については「ロスカットルールに則りJ-REITの投資口を売却した」と指摘した。
一方、「依然として各投資主体とも潜在的なJ-REITの売り圧力の強い状況に変化はない」との見方も示されている。モルガンMUFGは9日付リポートで3月の東京都心5区の空室率が上昇したことを受け、「景況感の悪化が悪影響を及ぼしている可能性が否定できず、今後の動向について楽観しにくい」との見方を示していた。
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