日経QUICKニュース(NQN)=藤田心
ニューヨーク原油先物相場が日本時間20日の取引で急落した。ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で期近の5月物は一時1バレル14.47ドルと、期近物として1999年3月以来約21年ぶりの安値を付けた。限月交代に伴う売りが膨らんだ結果で、6月物以降の限月は5月物ほどの下落はみられていない。もっとも、新型コロナウイルスの影響で需要は落ち込んでおり、本格的な回復にはなお時間を要する情勢だ。
■原油在庫の積み上がりで「ファンドの手じまい」
5月物の下落率は前週末の清算値に比べ約2割に達した。5月物の取引が21日に終了することから、「まとまったポジションを持っていた一部のファンドが手じまったとの観測がある」(三菱UFJリサーチ&コンサルティングの芥田知至氏)との声がある。原油在庫の急速な積み上がりが手じまい売りの背景にあったようだ。
5月物が大きく下げる一方で、それより先の限月の下げは限られている。足元では6月物が23ドル台と5月物との価格差は9ドル近くに達する。年末の12月物はそれより高水準の33ドル台で推移しており、フォワードカーブ(先物曲線)の形状は決済期限が近い期近物が期先物より安い「コンタンゴ(順ざや)」の状態にある。新型コロナの感染が次第に終息へと向かい、需要が次第に回復するとの市場の期待を映している面がある。
■原油、需要も貯蔵能力にも懸念 期近物は引き続き売り圧力
もっとも、12月物も新型コロナの感染拡大が深刻化する前に期近物が付けていた水準である50ドルには及ばない。感染の拡大抑止へ世界各国で在宅勤務が広がり、消費行動の変化が原油の需要を抑える可能性がある。石油輸出国機構(OPEC)などによる協調減産では需要減を補いきれないとの見方は根強い。「相場の回復局面で減産の順守率に差が出る懸念もある。新型コロナの状況に改善がみられても回復は年末時点で40ドル程度」(三菱UFJリサーチの芥田氏)との見方は多い。
期近物が引き続き売り圧力にさらされるとの不安も残る。野村証券の大越龍文氏は「米国のシェールオイルの減産が技術的に時間を要するため、期近物の上値を抑えている」と話す。
WTIの受け渡し拠点であるオクラホマ州クッシングの原油在庫はすでに貯蔵能力の7割が埋まり、満杯になるとの懸念も広がる。マーケットエッジの小菅努代表は「在庫水準が正常化するまでは上値は重く、6月物への限月交代後も20ドル前後での推移が見込まれる」と見積もる。米国では経済活動の再開を巡り先行きに楽観ムードも漂い始めているが、原油相場においては過度な楽観視はなおリスクが大きいようだ。
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