QUICK資産運用研究所=西本ゆき
トルコの通貨リラが下落している。新型コロナウイルスの感染者数が中東で最多となったトルコは景気の先行き懸念が強まり、資金流出が加速。22日にはトルコの中央銀行が8会合連続の利下げに踏み切り、高金利通貨としての魅力が一段と薄れた。国内で販売されている投資信託も、トルコの資産に投資するファンドや運用通貨をリラ建てにするタイプのファンドの運用成績がそろって悪化している。
■トルコの通貨、株式とも下落
トルコリラは21日に一時1リラ=15円35銭程度まで売られ、対円で過去最安値を更新。対ドルでも22日の利下げ後に2018年8月の「トルコ・ショック」以来の安値水準をつけた。
トルコの代表的な株価指数であるBIST100も年初から約15%下落している(図1)。新型コロナウイルスの感染拡大により、主要な貿易先である欧州の先進国で景況が急激に悪化。トルコ国内でも23日から4日間のロックダウン(都市封鎖)に踏み切ると伝わるなど、経済活動の正常化に向けた目途が立っていない。不安定な政治や外貨準備の減少も「トルコ離れ」に拍車をかけている。
■トルコ関連ファンドの運用成績は・・・
国内の投資信託市場にも動揺が走っている。国内公募の追加型株式投信のうち、主要なトルコ関連ファンドの年初来リターンを調べたところ、22日時点の純資産総額(残高)上位5本はすべて2ケタ台のマイナスだった(図2)。
アムンディ・ジャパンが運用する残高首位の「アムンディ・欧州ハイ・イールド債券ファンド(トルコリラコース)」(5831211A)は、22日時点の年初来リターン(分配金再投資ベース)が22.5%のマイナスとなり、今年に入って推計で26億円の資金が流出した。22日の残高は372億円だった。
同ファンドは外国籍投信を通じて欧州のハイ・イールド債(低格付け債)に投資し、運用通貨をトルコリラにして為替差益の上乗せを狙う通貨選択型。かつて高い分配金が投資家の人気を呼び、2014年には残高が4000億円台に乗せたこともある。
ただ、運用成績の鈍化につれて分配金を段階的に減額。13~15年にかけて1万口あたり250円の分配金を支払った時期もあったが、直近4月8日の決算では前月より10円安い30円と、11年10月の設定後で最低水準まで引き下げた。
残高上位5本は全てが毎月分配型で、先進国や新興国の債券を投資対象とするタイプだった。このうち4本が通貨選択型のトルコリラコース。残高4位の「トルコ・ボンド・オープン(毎月決算型)」(0431311B)だけが通貨選択型ではなく、トルコリラ建ての債券で運用している。5本の中では年初来の下落率が最も小さかった。
世界的なパンデミック(感染症の大流行)で資金流出が危ぶまれているのはトルコだけではない。他の新興国関連ファンドへの波及も含め、運用成績への影響や投資マネーの動きが今後も注目される。