QUICK Market Eyes=大野弘貴
英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙電子版は23日、ギリアドのエボラ出血熱治療薬「レムデシビル」について、「中国の新型コロナウイルス(COVID-19)患者に使う臨床試験(治験)が失敗した」と報じた。この記事は、中国の研究者が世界保健機関(WHO)の依頼に応じて提出し、WHOが草稿段階で誤って公開したものをFTが入手し、報じたもの。ギリアド株はこの日、4.3%安の77.78ドルで引けた。
ギリアドは同報告書の解釈に誤りがあると反論している。同薬の有効性の評価は治験結果の正式発表が待たれる。この治験は新型コロナ患者237人を対象に、うち158人にレムデシビルを投与し、残りの79人とその後の病状や体内のウイルスの数を比較している。投与患者のうち18人は重篤な副作用のため投与を中止し、その他の患者も回復ペースなどに非投与グループと有意な差が認められなかった。
■治験結果にアナリストは・・・
エバコアISIは23日付リポートで「レムデシビルは早期に投薬を開始すればするほど、有効性は高くなる。これはタミフルにも当てはまることだ。早期に治療を受けた患者においては潜在的な有効性があることが示唆されている。ただ、レムデシビルは特効薬ではない」との見方を示した。
JPモルガンは「ギリアドは見解で、治験が早期に終了したことで統計学的な検出力が欠如していると指摘している。足元のデータだけでは有効性がないとも判断できず、より確固とした答えを得るために、来週までに発表が予想される重症患者を対象とした米国の研究と、5月下旬に予想される2つの無作為化試験のデータに注目したい」とした。
モルガン・スタンレーは「この研究は登録者数が少ないため早期に終了した。統計的に意味のある結論を出すには力不足だ」とし、「データの傾向から、早期に治療された患者にレムデシビルが有益である可能性が示唆される」と指摘した。「レムデシビルが重症患者にそれほど効果的でなかったとしても、我々は驚かない。4月下旬の重症患者向けの治験結果を期待している」との見方を示した。
■重症患者には効果小?
SVB LEERINKは「患者の症状別での結果の差異、早期に打ち切られた治験から統計的なノイズがあり、今回の結果は必ずしも決定的なものではない」と指摘。一方で、「レムデシビルは重症患者における治療効果は小さい可能性がある」との見方も示した。米国の治験では人工呼吸を5日以上必要とした患者は被験者から除外されたが、中国の研究では同様の除外基準が採用されなかったと指摘している。
ただ、「最近の医学文献では、COVID-19が重度の免疫調節不全を引き起こし、組織損傷をもたらすことが示唆されている。懸念されるのは、レムデシビルはウイルス量の減少にはつながらなかったことだ。これは、レムデシビルがウイルス複製を引き起こす感染細胞や組織に十分に侵入できない可能性を示唆するものである」との見方を示した。
それでも、「レムデシビルを早期に、かつ重症度の低い患者に投与した場合には、依然として有効性を示す可能性があると、慎重ながら楽観視している」としている。
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