QUICK Market Eyes=大野弘貴
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、4月16日に特別措置法に基づく「緊急事態宣言」が7都府県から全国に拡大されて約2週間が経った。欧米では徐々にロックダウンを緩和する動きが広がる中、日本においては当初予定された5月6日全面解除への見通しが立っておらず、今後についても不透明な状況だ。
緊急事態宣言を受けて、「社内の人間はほとんどが在宅勤務です。我々を除いて」(国内証券会社のトレーダー)といった声や「思わぬ形でテレワーク推進ができました」(国内エコノミスト)など、金融市場関係者の間でも影響が出ている。
緊急事態宣言がもたらした働き方の変容は、投資家の投資行動をどのように変えたか。
■マザーズ市場では
顕著な例が東証マザーズ指数の上昇だ。東証マザーズ指数は7都府県に非常事態宣言を発令した7日以降、27日の終値までに19.4%上昇した。売買代金も急増している。14日以降、マザーズ市場の売買代金は27日まで10日連続で1000億円を超えた。5日移動平均で見ても、ここ数日間の売買代金の増加が顕著になっている。
「個人投資家の動きは活発だ。任天堂(7974)やソニー(6758)といった大型株ももちろん人気ではあるが、日経レバ(1570)や日経ダブ(1357)といったレバレッジ型上場投資信託(ETF)に加え、最近はCOVID-19のワクチン開発期待でバイオ関連銘柄など短期間で大きな値幅が狙える銘柄も物色されやすい」(ネット証券)といった声が聞かれた。
個人投資家のマザーズ熱は東証の統計にも表れている。東証が発表した4月第3週の投資部門別株式売買状況によると、個人は東証マザーズにおいて113.9億円を買い越した。個人の買い越し額が100億円を超えるのは、1月第3週(約149億円の買い越し)以来の大きさとなった。マザーズ指数先物は5.6億円の売り越しだった。なお、同期間における個人の東京・名古屋2市場、1部、2部と新興企業向け市場の合計(現先)では108億円の買い越しにとどまっていたため、相対的にマザーズの買い越しが目立っていた様子が伺える。
■対照的な東証1部
対照的に緊急事態宣言以降、東証1部の売買代金は低迷している。
「機関投資家は緊急事態宣言以降、普段と異なるオペレーションになったために積極的な売買を控えている。緊急事態宣言が長期化するようであれば本腰を入れて体制を構築すると思われるが、足元の状況では決算発表までとりあえず様子見姿勢を維持する先が多いように見受けられる」(外資系証券)。
「まさに、緊急事態宣言下の特徴的な相場環境と言えそうだ。流動性が薄い分、価格は上下に動きやすいものの日銀によるETF(上場投資信託)買い入れがあるため、下値は底堅い。東証マザーズ指数の上昇を受けて、日本株全体のセンチメントも改善したように思えるが、あくまでも特殊要因によるものとして捉えたい」(国内ストラテジスト)。
足元ではロックダウン緩和の動きと緊急事態宣言下のやや特殊事情ともいえる状況で株高が実現している側面もありそうだ。
しかし、経済活動再開後にCOVID-19の感染が再拡大する可能性もないとは言い切れない。中国では、一度収束したCOVID-19の新規感染者数が、海外からの旅行者によってもたらされたことで再び増加したケースもあった。
緊急事態宣言解除後に足元の投資行動がどのように変化するか、見極めたい局面でもある。
<関連記事>
■新型コロナ関連でも外国人の低持ち株比率が株価上昇のキーワード
■原油ETFが日々の先物保有状況を開示 主要2銘柄は期近物を保有せず
■原油、大幅安の後で進む安定への地ならし 減産期待で「恐怖指数」低下