日経QUICKニュース(NQN)=藤田心
ニューヨーク原油先物相場が日本時間22日の取引で急落した。ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で期近の7月物は一時1バレル30.72ドルと、前日の清算値に比べ3.20ドル(9%)安い水準を付けた。香港の統制強化を巡る米中の対立や中国経済への懸念が、このところの上昇基調に待ったをかけた。米国のシェール企業の減産ペースが緩むとの見方も出ており、市場参加者からは上値の重い展開を見込む声が目立つ。
■原油需要の増進に期待
NY原油相場はこのところ騰勢を強めていた。米国をはじめ各国で経済活動再開の動きが広がり、原油需要が持ち直すとの期待が高まった。石油輸出国機構(OPEC)やロシアなど非加盟産油国で構成する「OPECプラス」が5月から日量970万バレルの協調減産を始め、サウジアラビアなどが追加の減産に乗り出すと発表したことも相場上昇を後押しした。米国の原油貯蔵能力が限界に達するとの懸念が後退しているのも支えとなっていた。
■米中対立の激化と中国経済への懸念
ただ、こうしたムードは日本時間22日の朝方に一変した。きっかけは香港を巡る米中の対立だ。中国が22日開幕の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で香港での国家分裂などの行為を禁じる「香港版国家安全法」を議論することになった。
これに先立ち、トランプ米大統領は「(統制強化が)実現すれば我々は極めて強力に対処することになる」と警告。米中対立の激化が世界の経済活動に影響を及ぼし、原油需要が減退するとの警戒につながった。
フジトミの斎藤和彦チーフアナリストは「中国経済への懸念もパニック的な売りにつながった」と話す。全人代では2020年の経済成長率の目標設定が見送られた。設定見送りは異例で、ロイター通信は前週に「燃料需要の高まりで4月の中国の原油需要は3月から増えた」などと伝えていた。「中国の経済活動再開に伴う需要増を期待して買われていた分、失望売りを招いた」(斎藤氏)という。
■米シェール企業が生産再開?
米国のシェール企業が生産を再開するとの見方も売り圧力となっているようだ。ある石油アナリストは「1バレル23~32ドルが生産コストをまかなえる水準とされ、前日には34ドル台後半まで上げたことで高値警戒感もあったのではないか」と指摘する。週明け25日は米市場が休場となる。これも「売買が細る前に投資家を利益確定の売りに向かわせた」(同)。
今後の相場について、市場参加者からは上値は重いとの予想が目立つ。ニッセイ基礎研究所の上野剛志シニアエコノミストは「経済活動の再開で需給は引き締まるとみられるが、この1~2週間でかなり織り込まれてきた」と指摘する。その上で、「40ドルを超える水準では協調減産の足並みの乱れも想定される。当面は20ドル台後半から30ドル台半ばで新型コロナウイルスの感染や米中対立の動向を見極めるのではないか」とみていた。
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