QUICK Money World=伊藤央峻
急回復のV字型ではなく緩やかなU字型――。QUICKと日経ヴェリタスが外国為替市場関係者を対象に実施した共同調査によると、新型コロナウイルスからの世界経済の回復について、こうした見方が多いことが分かった。回復のエンジン役は中国を想定する一方、新興国経済については警戒感が強い。
新型コロナの感染拡大で最も深刻な打撃を受ける国はどこかを聞いたところ「中南米やアジアなど新興国」との回答が50%と半数を占めた。それぞれ17%の「米国」や「欧州」に比べ、経済基盤が弱くリスクが大きいと警戒されている。
ドルの総合的な値動きを示すドルインデックスは年初から3%上昇したが、MSCIが算出する新興国通貨指数は6%安で推移する。基軸通貨であるドル需要が3月以降に一気に高まりドル建て債務の多い新興国の財政に重荷となっている。国際通貨基金(IMF)に金融支援を求めた国は100を超えた。
現時点では米連邦準備理事会(FRB)の大規模な金融緩和がドル高を抑制し、新興国通貨の買い戻しにつながっている。ソニーフィナンシャルホールディングスの尾河真樹チーフアナリストは「新興国の資産に投資している欧米の金融機関などにリスクが波及しないか目配りが必要だ」と指摘する。
コロナ後に景気が最も早く回復する国も予想してもらった。「中国」が68%と最多で「米国」(18%)や「日本」(9%)と差をつけた。回復のペースについてはやや悲観的だ。コロナの混乱が収束したあとの経済見通しについて、底這いの後に緩やかに回復する「U字型」が47%、「L字型」で停滞するが38%。「V字型」はわずか3%で楽観論はほぼなくなった。
「コロナのダメージの大きさに加え覇権をめぐる米中の対立も懸念材料だ」(マネーパートナーズの武市佳史チーフアナリスト)。市場のリスク回避が8月以降も続くとみる回答者は49%。前月調査では27%で、予想が後ろにずれこんでいる。
ドル・円・ユーロの動きに関しては「こう着」(28%)、「円>ドル>ユーロ」(25%)、「ドル>円>ユーロ」(24%)だった。欧州連合(EU)内部での対立など問題を抱えるユーロが相対的に弱いものの、経済活動の停滞で主要3通貨とも動きづらいという見立てだ。
調査は18~20日に実施。金融機関や事業会社の外為市場関係者92人が回答した。
※QUICKでは株式、債券、外為の市場関係者を対象に、景気や相場動向についての月次アンケートを実施しています。それぞれの調査結果の詳細は、QUICKの様々な金融情報端末・サービスで公表しています。