先月に引き続き、コロナ禍においてアートマーケットの現状についてレポートする。
各地の臨時休館を行っていた美術館・博物館では、日本博物館協会の感染拡大防止ガイドラインや国際美術館会議の新型コロナウイルスに関する注意事項などに則り、感染拡大の防止を図りながら、開館の動きを見せている。既に、ドイツ・イタリア・フランスなどでは、ギャラリーや小規模な博物館・美術館が条件付きで再開しており、それぞれの国のガイドラインに従ったチケットのオンライン購入や展示室内でのソーシャル・ディスタンスの確保などの感染リスクへの対策が、参考になるかもしれない。
■毎日オークション、徹底した感染リスク対策取り再開
自粛によりセール開催が延期されていた国内のオークションハウスで、一早くセールを開催したのは、毎日オークションである。
毎日オークションは、4月11日(土)に開催を予定していた「第637回絵画・版画・彫刻オークション」が5月15日(金)・16日(土)の2日間で開催された。
感染リスクへの具体的な対策として、スタッフの検温、手指の消毒、マスク着用の徹底はもちろんのこと、スタッフとの接触が想定される箇所には、透明カーテンや会場内やアクリル板の設置、扉開放による換気など環境も整備された。事前の案内では、WEB・書面・電話などでの入札を推奨し、来場者数を減らすとともに、下見会やオークションへの来場を完全予約制とし人数制限が行われた。来場者には、検温と手指のアルコール消毒とマスク着用厳守の協力が求められ、来場者の安全、スタッフの安全、施設管理、パブリック・コミュニケーションいずれの観点においても、十分な注意を払っての開催となった。
■コロナ禍における大きな影響を感じさせない
今回のオークションでは、958点の美術品がセールにかけられた。出来高は、落札総額9,992万8千円(手数料含まず)、落札率は、72.7%であり、コロナ禍における大きな影響を感じさせない結果となった。
熊谷守一の水墨淡彩画LOT551「猫」が、落札予想価格70~100万円のところ、220万円で落札され、本セールでの最高額での落札となった。次に高額落札だったのは、草間彌生のシルクスクリーン作品LOT720「かぼちゃ(GT)」で、落札予想価格100~150万円のところ、210万円で落札された。両作家とも、複数の出品があるが、いずれも落札予想価格下値を下回る落札もなく、手堅い落札結果となった。
■“無観客オークション”という新しい試み
6月には、毎日オークションはじめ、SBIアートオークション、SHINWA AUCTION、マレットジャパン オークションと国内のオークションハウスで順延となっていたセールの開催が予定されている。
また、SBIアートオークションでは、2020年8月頃を目処に会場を使用しない無観客でのオークションの開催を計画しているという。これは従来のオンラインのみのオークションとは異なり、実際にオークショニアがオークションを執り行い、顧客は家で動画配信を見ながら、画面越しにオンラインまたは電話でオークションに参加できるというもの。コロナ禍を機に計画された、新しいオークション形式の案である。出品作品は、これまでのモダン&コンテンポラリーアートオークションの特色を踏襲しながら、新規顧客にも参加しやすいラインナップを取りそろえる予定だという。“無観客オークション”という新しい試みに注目したい。
海外のオークションハウス、サザビーズやクリスティーズでは、ビット期間を設けて入札方式でのオンラインでのオークションを行っている。5月4日~14日にオンラインで開催されたサザビーズのコンテンポラリー・アート・デー・オークションでは、1370万ドル(約14億6800万円)の売上があり、オンライン販売での可能性の大きさに期待が高まる。
依然、アート市場全体としては、コロナ禍による作家活動やマーケットの停滞が続いており、そのダメージは計り知れない。活躍の場が減ったアーティスト、再開が難しくなっている美術館、画廊などへの確実な支援が緊急課題となる。再開した美術館やオークションハウスでも、今回のような緊急事態を見据えたニューノーマルへの適切な対応が求められている。
(すべて落札手数料を含む価格、月1回配信します)
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